頂 無敵の所有物宣言 1 「日野さん、そこはもう少しゆっくりの方が良いんじゃないかな」 「あ、そうですねっ…ごめんなさい」 「だが、今の音は良かった」 「本当?有難う月森くん」 四つの音が響き合うのはとても心地良い、なのに、志水の心はざわついていた。 (…どうして、香穂先輩…) 目の前の彼女はひどく楽しそうに笑っていて、今まで知らなかった感情が胸のうちで渦巻いて、徐々に大きくなってゆく。 彼女は、香穂子は自分の恋人なのに、どうして? どうして、あんな風に笑うんだろう…? 無敵の所有物宣言 放課後、香穂子はアンサンブルの練習をする為に、月森と柚木、志水と練習室に居た。 やはり彼らの演奏レベルは高く、学ぶことも多いなと痛感する。 「ねぇ、此処ってどういう風に弾くと良いのかな」 「此処か?」 月森に歩み寄り、自らの楽譜を差し出して問い掛ける。 自然と顔も近寄るけれど、鈍感な二人にはあまり関係は無いようで。 しかし、それを見た志水の瞳は、大きく見開かれた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |