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蝶への孵化-metamorphosis- 2

こん、こん。


「…ああ、入りたまえ」


理事長室のドアをゆっくり二度ノックが来訪の証。

内側から聞こえる低めの声に、香穂子はほんの少しの緊張と両手いっぱいの愛おしさを胸に部屋へ入っていった。



「…と、いう訳で、吉羅さんの所為です」

「たかがケーキで私の所為呼ばわりとは、心外だな」

「たかがじゃないです!食べたかったのにぃーっ」


理事長室のソファに向かい合わせで腰掛ける。

そう、毎週月曜日は理事長室で秘密の逢瀬…これは二人が決めた約束。

忙しい彼だから、いつでも会える訳じゃない。

だから月曜日は何としても、目の前の年上の恋人に会えるようにしているのだ。


「そんなに言うなら、来なければ良いだろう?」


違うかね、と視線で問い掛けられ、香穂子はたじろいだ。

ソファに腰掛け、脚を組む其の姿は尊大で、なのに見とれる程に綺麗。


(…卑怯だ)


そんなこと出来ないって、解ってるくせに、狡い。



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あきゅろす。
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