頂
蝶への孵化-metamorphosis- 1
「香穂ちゃん、今日駅前にケーキ食べに行かない?」
「美味しいって評判なんだって」
放課後の教室、鞄に荷物を纏めていた香穂子の肩を叩いて、彼女たちはにっこり笑顔。
嗚呼、なんて素敵なお誘い!
しかし香穂子は涙を呑んで、首をゆるゆると横に振った。
親友二人は「えぇー」と不満を露わにした声を上げる。
「なんで?あんた行きたいって言ってたじゃん」
「もしかして、ヴァイオリンの練習?」
矢継ぎ早に質問され、香穂子も困惑の色を浮かべるが、今日だけは。
「違うの、そうじゃなくて……」
…行かなきゃいけない場所があるの。
蝶への孵化-metamorphosis-
本当に惜しいことをした…駅前のケーキ屋は雑誌に取り上げられる程美味しいらしく、一度は行きたいと香穂子自身漏らしていたお店。
親友二人も気を利かせて誘ってくれたのだろう。
それを無碍に断ってしまった…申し訳ないと同時に、食べたかったと身体が嘆く。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!