まつげの先にジェラシーのせて 2. 昼休みの後からなんだか三橋の様子がおかしい。何を話かけても生返事しか返ってこない。…っていうか素っ気ない。野球の話をしてみても、今度どっか行こうかって誘ってみてもてんでダメだった。 ……? オレなんかしたっけ? いくら考えても思い当たる事はない。 三橋の態度に少しイライラしながらも、オレは三橋の不機嫌の理由を考えていた。 だけど部活になってオレの怒りは爆発した。 投球練習で全くやる気のない球を投げて来やがったのだ。 プライベートでもし喧嘩したり気まずい事が合っても、部活には持ち込まない。これは暗黙のルールだ。 そりゃあ人間だから、上手く切り替えられない時だってある。だからちゃんとしようと思っていながらも、それが上手く出来ないっつーんならオレは何も言わない。 だけど今日のコイツは明らかに、ワザとやる気のなさをオレに見せつけている。 「三橋!」 怒鳴りながら三橋の傍に駆け寄った。怒鳴られると解っていたんだろう。構えてはいたみたいだけど、ビクッと三橋は肩を震わせた。 「お前今の球、何?」 「……」 「ワザとあんなやる気のねー球投げてんだろ」 「ワザと、じゃ、ない」 「嘘付いてんじゃねーぞ!オレが解んねーとでも思ってんのかよ!」 「………」 三橋はだんまりを決め込んで、オレから顔を逸らす。 オレと三橋がやり合ってんのにみんなが気付き出し、チラチラとこっちを見出した。ここで派手にやり合って、練習自体を中断させてはまずい。 オレはその場に三橋を置いてモモカンの所まで走った。 「カントク、あの…」 「何かあった?」 理由を話して三橋とふたりで話が出来るよう頼んだ。モモカンも遠目にオレ達を見ていたらしく、すぐに承諾してくれた。オレは三橋を連れて部室へと向かった。ちょっと遠いけど落ち着いて話すんだったらやっぱり部室がいい。 部室までの道のり、三橋は一度もオレをまともに見なかった。オレが目を向けるとすいっと逸らす。いい加減ムカつくけど怒っては話が出来なくなる為グッと堪えた。 「なんなんだよ、昼休みからずっとおかしーぞ」 「……」 「黙ってても解んねーからな」 部室の畳の上に座り三橋に問う。片膝を立てて座るオレとは対照的に三橋は正座していた。きちんと座っているから真面目に話す気があるのかと思いきや、相変わらず目は合わさないし一言も話さない。オレも意地になってきて、三橋が喋るまで黙る事に決めた。 どれくらいそうしていただろう。静まり返った部屋の中で、ようやく三橋の声が聞こえて来た。 「…阿部くんは、水谷くんと、仲いい、よね」 「はあ?」 なんの脈絡もなく出てきた水谷の名前に驚き、声が裏返る。今は三橋のやる気のない投球の原因を聞いているはずなのに、なんで水谷? 疑問に思っているオレを差し置き、三橋はボソボソと歯切れ悪く言葉を続けた。 [←back][next→] [戻る] |