花は散り、花は咲き、花匂う 7.(R-18) 目に刺さるほど鮮やかな朱と金を織り込んだ布団の上に、二人して倒れ込んだ。 薄い壁の向こうからは微かに遊女の笑い声が、障子の向こう側からは客引きをしている遊女の声や男達のさざめく声がしている。 でも二人には自身の脈打つ心臓の音しか聞こえない。指一本動かすのにも馬鹿みたいに緊張していた。 廉はこうして阿部に組み敷かれる日が来るのを、いつでも覚悟していたつもりだった。だがいざ実際になると、怖さと緊張の為体が震える。 阿部に抱かれる事に抵抗は感じない。寧ろ待ちわびていたぐらいだ。いつもいつも阿部の隣に座り唇のみを与えられ、鎖骨を吸われる。その先はない。 阿部がいない時、鏡を手にして鎖骨に阿部が残した痕を確認する。毎回帰り間際に吸われるそこは、赤というより赤黒く紫がかって変色していた。でも廉はその痕が濃ければ濃いほど強く阿部を感じて体を熱くしていた。 だから今阿部がしようとしている行為を、歓喜と戸惑い、恐れ様々な感情を混ぜ合わせてただ待っていた。 阿部は壊れた思考を立て直すのに必死だった。たが、少し直す度に廉の濡れた瞳が唇が白い首筋が目に入り、余計に壊されていく。 別に、立て直す必要など何処にもないんじゃないか。馬鹿げた概念に捕らわれてないでこのまま沈んでしまえばいい。 止まらない欲望に突き動かされ、阿部は廉に接吻した。唇が触れる瞬間廉は待っていたかのように口を開け、阿部を受け止めた。 「…んっ…ふっ、んんっ」 さっきからずっと同じ場所ばかり弄られ続け、廉は我慢出来ずに涙を零す。 最初は痛いだけだったのに、今ではぞくぞくするような快感に変わっている。 男なのに薄い胸板を擦られて、微かに赤い突起を摘まれ弾かれ引っ掻かれ、体中をびくびく震わせながら感じていた。 少しでも快感を逃したくて、身を捩り声をあげようとするけれど、唇は阿部に塞がれていてそれも出来ない。 体の中で渦巻く熱は下肢に集まり、廉自信を硬く勃ちあがらせ先からはとろりとろりと透明な液を吐き出す。 「ふっ…あふっ……うぅん…」 自然と腰を揺らし始めた廉から阿部は唇を離した。 「廉、腰が揺れてる」 「あっ…ああっ、やぁっ!」 唇を塞ぐ物がなくなり激しく喘ぎ始める廉の耳元で阿部は囁くが、胸への刺激を止めない為廉は答える事が出来ない。 「胸しか弄ってないのに凄く勃ってぐしょぐしょに濡れてる」 阿部は言葉で更に追い打ちをかけ、廉の耳の中に舌を入れた。 「やっ…あぁん…あっ、あふっ…」 どんなに恥ずかしい事を言われても、全て本当の事だから否定出来ない。否定しようにも口からは信じられない程艶っぽい声しか出ず、涙を流すだけだ。 阿部から与えられた快楽を素直に受け止め、快感に打ち震える廉を満足げに見下ろしながら、阿部は廉自身を軽く握った。 「あああああんっ!」 一際高く喘ぐ廉の声を聞き、阿部はそのまま扱き始めた。 「やっ、だめっ、でちゃうっ!…あんっ、あっ、でちゃう、からっ」 「いいよ、出して」 「あはっ、はぁああああん!」 二、三度扱くと呆気なく廉は自分の腹の上に精を吐き出した。 「…うっ、ひっく…う…」 廉は肩で息をしながら両手で顔を覆い、泣いている。阿部はそんな廉の額に何度か唇を落とした。両手を少しずらして廉は阿部の瞳を恥ずかしそうに見た。 「オ、オレ、厭らしい?」 「ええ?…うん、厭らしい」 阿部がそう答えると廉はくにゃりと顔を歪ませた。 「い、厭らしい子は、嫌い?」 「いいや、好きだよ」 阿部がそう答えると今度はふにゃりと顔を緩ませ 「よかった」 と笑った。 その笑顔を見て堪らない程愛しさを感じ、阿部は廉を抱き締めまた唇を重ねた。 唇を離して廉に自分の人差し指を舐めるように言う。躊躇いながらも廉は阿部の指を口に含む。 口の端から唾液が溢れる程必死に指を舐める廉の口から指を引き抜き、そのまま下肢へと指を運び固く閉じた蕾に押しあてた。 びくっと怯えたような瞳をする廉に大丈夫だと囁いて、阿部は体をずらした。 蕾にあてた指をゆっくりと動かしながら、萎えてしまった廉自身をそっと口に含む。吸い上げて舌先で先端を刺激すると苦味が舌に広がり、廉自身もまた硬さを取り戻し勃ち上がり始める。 阿部の頭上では廉が甘い声を漏らし始めた。前からの刺激で力が緩んだ所に、蕾にくっと指を挿し込む。瞬間廉の体がびくっと跳ね、甘い喘ぎが苦しげな声に変わる。 「いた…、い…たいよ…」 涙混じりに訴える廉の言葉も聞かず、阿部は指を押し進める。指の根元まで入れた後、内壁を探るように指の腹を擦っていくと、しこりのように少し固い場所に当たった。 「ああんっ!やっ…やぁっ!」 廉の腰が更に大きく跳ねる。余りにも強い刺激に驚き口をぱくぱくさせている。阿部はしつこくそこを擦り、口に含んだ廉自身も攻め立て、あっという間に射精させた。 一旦蕾に埋め込んだ指を引き抜き、その掌に先程口で受け止めた廉の精子をどろりと吐き出し、また蕾に塗り込んでいく。 急速に射精させられた廉は、白い太ももをぷるぷると震わせぐったりとしていて、蕾を弄られても声も出せない。 阿部は二本三本と指を増やし、誰にも晒した事のないその場所をゆっくりと暴いていく。 「…ふぁっ……あぁ、あぁん……ひゃあぁん…」 苦しげだった廉の声に、快楽に酔うような甘い喘ぎが混じる。淫らな肢体に甘い声と厭らしい水音。阿部ももう我慢の限界だった。 指を引き抜き、廉の足を更に大きく開かせる。 「挿れていい?」 耳元で囁き答えも聞かず、柔らかくほぐれた蕾に自身の先端を押し当て腰を進めた。 「あっ、あっ……あっ…」 与えられる快感をただ素直に受け止め、廉は体を震わせる。無意識に伸ばした両腕は阿部を探して宙を彷徨う。阿部はその腕を取り自分の背中にしがみつかせ、そのまま一気に貫いた。 「ひゃあぁぁぁんっ!」 しなやかにしなる体を抱き締めて、阿部は廉を追い立てていく。それと同時に廉も無意識に阿部を追い詰める。 「れんっ、れ…んっ」 阿部から切なげに名前を呼ばれ、廉は更に大きな快感を得る。余り力の入らなくなったその手で阿部の背中に爪を立てた。ぴりっとした痛みを背中に感じ阿部も喘ぐ。 「た、かや…さ……好きっ…す…きぃ……」 がくがくと体を揺さぶられ、切なげに漏らす廉の唇を塞ぐ。軽く口腔を舐めあげすぐ離した。 「…愛してるよ」 そう告げると廉はぼろぼろと涙を流した。 「離さ…ない…で…」 小さくそう呟くと耐えきれなかったようにまた激しく喘ぎ始める。 限界を感じた阿部は更に激しく腰を打ち付け、廉の最奥で果てた。連も阿部の熱い飛沫を体の中で感じ射精した。 覆いかぶさって来る阿部に廉は息をつきながら言う。 「お願い……また首吸って…痕……消さないで…」 「わかったよ…」 阿部が笑って答えると廉は安心したように瞳を閉じた。 [←back][next→] [戻る] |