BL部屋
愚かの鷲《黒緑高》
ドロドロ三角関係を目指しました…が、私がお花畑中毒なので、たいしたことないです。
「よっ、くーろこ君っ」
「高尾君でしたっけ、こんにちは」
「おっ、名前覚えててくれるなんて光栄だねェ」
廊下で見かけた黒子君に、なんとなく声をかけてみた。自己紹介もしていないので、相手がこちらの名前を知っているのは正直驚きだ。
「何か用ですか」
「いや、用って訳でもないんだけど…」
本当に何となく声をかけてしまったので返答に迷っていると、黒子君が口を開いた。
「でも、ちょうど良かったです。緑間君の新しい影とは、一度話してみたかったので」
影??なんのことだろう。
「影ってどゆ意味??」
「主役を引き立たせる、とでも言いますか。僕が気に入って使ってるだけなので、あまり深く考えないで下さい」
「そう??ならいいけど」
イマイチ掴めない黒子君に内心首を傾げるが、話は適当に合わせておいた。
「そうそう、一応君にも言っておきますが」
しばらく無言が続いた後、黒子君は変な前置きで話を始めた。
「僕は、学校が離れたくらいで緑間君を手放す気はありません」
は…??
「ちょ、黒子君??何言って…」
「その様子だと、まだ緑間君は君に堕ちてはいないんですね」
だったら手っ取り早いです、と、目の前の薄い色の瞳の彼は続ける。
「連れ戻すだけでいいみたいですから」
形を変えることはないと思っていた唇が、はっきりと歪められた。
その時…。
「高尾??ここにい、た…」
緑間が俺を探しに来たらしいが、途中で言葉を不自然に切った。
その視線の先には、
「黒子……」
「お久しぶりです、緑間君。ずっと会いたかったんですよ」
先程歪められた唇は孤を描き、慈しむような視線は緑間に向けられている。
「何を言っているのだ。急に消えたのはお前だろう…??」
平静を保とうとした緑間が眼鏡を上げたが、その指は小刻みに震えていた。
「それも謝りたかったんです。これから少しお話できませんか」
黒子君の問いに答えたのは、緑間の走り去る足音だった。
「く、黒子く「なかなかいい反応です、こっちも燃えてきました」
しばらく放心状態だった俺がようやく声をかけようとすると、黒子君はそれを遮って綺麗に笑ってみせた。
だが、慈しむようだと思った眼差しだけは、間違いだったようだった。
これは、例えるなら火神や黄瀬に似合うような、肉食獣の目だ。
「さ、高尾君、ここは君に任せます。緑間君を探して慰めてあげて下さい。そうすれば僕がまたその心を手折ることが出来る……」
唇を舐めながら言う彼の表情は、いくら綺麗でも見続けたいとは思わなかった。
こいつは、狂ってる…。
俺は何も言わずに、緑間が消えた方向に走っていった。
───────────
はぁ、はぁ…。
思わず逃げてしまった。
中学時代と少しも変わらない、何を考えているのか分からない眼。怖い。
大体、突然姿を消したのはあいつの方だと言うのに、今更何なのだ。
そうは思っても、あの瞬間に怖いと思ったのと同じくらい、もう一度会えたことに胸が高鳴っている。我ながら女々しく想い続けていたことにウンザリする。
「あいつは…きっと、追って来てはくれないのだろうな」
ほんの独り言だった。別に追って欲しかった訳でもなかった。今あいつの顔なんて見たら、冷静ではいられない気がするから。
が、その言葉に答えるように足音が聞こえた。
「いた、緑間…」
「高尾…」
やっぱりな、という気持ちと、少しホッとした気持ちが混ざった声が漏れる。
「あからさまにガッカリした顔すんなよ」
「いや、お前で良かった…」
今まで肩を預けていた壁に背中をべったり付けて、思わず息をついた。
正直、さっきのおかしな行動を見て、気味悪がらずに追い掛けてくれたことに感謝もしている。
「なぁ、緑間。一つだけ聞くけどよ」
「…なんだ」
「お前、まだ黒子君のこと、好き??」
まだ……??
俺は一度だってこいつに昔の話をしたことはないのに、黒子が話したのか。
「今も昔も、黒子は尊敬に値する選手だ」
思わず口をついてすらすらと出てきた嘘に、自分で感心した。有り得ないくらい動揺しているというのに、保身の為の嘘はしたたかに言葉にできるのか。
しかしその言葉への反応はなく、代わりに元々壁にくっついていた肩をぐいっと押された。
そのまま何の前触れもなく口付けられた。
優しく、優しく。
行為は酷く唐突で暴力的なくせに、そのキスは優しく俺に捧げられた。
ふと、もうずっと過去の記憶の中から、黒子との行為を思い出した。
今の高尾とは比べ物にならないほど俺を乱暴に扱う手、唇。
それでも、あいつが隣にいてくれるだけで満足だったっけ…。
つぅ、と、一筋だけ涙が零れた。
傍にいて欲しいのは今もなのに、黒子は迎えに来てさえくれない。
それでも、高尾の隣にいる自分も嫌いじゃなくて。
とんだ尻軽だったもんだと、自分を嘲笑った。
唇だけをひたすらに合わせる長い口付けは、高尾が突然始めて突然終わらせた。
「緑間…泣いてるの??」
頬に跡が残っているだけの涙を指で伝い、高尾が俺を見つめる。
キスをしている間さえ別の男のことを考えていた俺には、少しばかり眩し過ぎる眼で。
俺は、強い光を持つ眼に弱いのかもしれない。一瞬でも見ていられないと思うのに、ずっと見ていたいと思う。
「ねぇ緑間…影でいい、俺が影になるから、俺だけを見てくれない…??」
『緑間君の影になります』
そう言ったのに、いつの間にか消えていった奴と、少しだけ被った。
それでも高尾は選べない。俺の心は、帝光から動いていないから。
「黒子の代わりなど、俺には存在しない」
「キスはさせるくせに……」
そう言って再び唇を合わせた高尾の目が、朱く潤んでいたように見えたが、構わずに目を閉じた。
その瞼に写るのは、薄い色の瞳の、あの男。
(欲しいのは、キスじゃない、カラダじゃない)(キミの、トナリ、だったのに)
*****
ライカ様リク《黒緑高で三角関係》でした、いかがでしたか??
シリアスが極端に苦手なので、アリ/プロ様の名曲達を聴いて鬱になりながら書きました。題名でピンときた方、アタリです。
残念な仕上がりですが、ともかくライカ様にプレゼント!!
H21.7.30
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