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心からの言葉をきみに
大好きなきみだから
たくさんたくさん 伝えさせて







「うん、よく似合う」

獄寺くんの家のソファーに二人で座って、俺はたった今付けてあげたネックレスと獄寺くんとを交互に見ながらそう言った。
「ありがとうございます…!十代目!」

真っ赤になりながら最高の笑顔でそう言って俺をぎゅうっと抱きしめる。
ああちょっと苦しいよなんて思ったけど今日は気にしないであげようだって今日はきみの特別で一番大切な日。

「誕生日おめでとう、獄寺くん」






一週間前、何が欲しい?と聞いたら
『何も要りません、ただ…』
そう区切って、少し恥ずかしそうに目を伏せた。
少し照れたような誇らしいような、そんな顔で言ったのをよく覚えている。

『ただ貴方が傍に居て下されば俺幸せっスから』





だから今日、俺は獄寺くんの願いを叶えてあげることにした。外泊許可を取りこうして獄寺くんの家でふたりきり。
さっき付けてあげたネックレスは気持ち的にはおまけのつもりで。

「今日はずっと一緒に居るよ」
笑顔で言えば心底嬉しそうに、でも切なそうな顔でありがとうございますと返された。

「でも…」
「ん?」
そうしたらすぐに獄寺くんは僅かに顔を伏せて、俺があげたネックレスを愛おしそうに握り込む。

「どうしたの?」
「俺…本当に、十代目にこうして頂けるだけで、すげー幸せなんです」

優しさに満ちた声と表情は、マフィアであることを疑わせるには十分過ぎて。
かつての悪童スモーキンボムは果たして、こんな風に笑ったのだろうか。
考えの行き着く先なんて容易に想像できてしまうから、なんだか可笑しくなって少し笑った。

「本当にきみは欲がないなあ」

自分のためだけに何かを欲しがったことないでしょう。


「そんなこと…ありませんよ、俺はいつだって自分のために生きてるんです」

そんな綺麗な人間じゃないんです。なんて、
そんな情けない顔して、綺麗な顔が勿体ないよ。

「でもきみはいつも俺優先だよ」
「俺がそうしたいからです」
「いつも俺の傍に居てくれる」
「俺が離れたくないだけなんです」


(ああほら、)

またそんな顔をして、きみの一番の悪い癖。

(想ってるのはきみだけじゃないんだよ)


「…っじゅーだいめ?」
「そうやってまたすぐ"自分がそうしたいだけ"って言う」

なんだか悔しかったから右側に座るきみに向かいあって、俺の肩に顔を埋めさせるように、俺よりも大きくて逞しい体を抱き締めてやりながらそう言った。

思えばいつもそうなんだ。俺だってきみが好きで好きで大好きでずっと傍に居たくて傍に居て欲しくて。見て欲しくて触れて欲しい。きみが俺を甘やかして優しくして、いつも抱きしめてくれるように。
同じことを俺だってしてあげたいんだ。


「俺だって獄寺くんが大好きなんだよ」

自分だけだなんて思わないで。
もう一人じゃないだろ、俺は傍に居るよ
もっと笑ってもっとワガママになって

せめて今日くらい、
「もっと甘えて良いんだよ」

「…すいません」
「謝んないでよ」
「ありがとう、ございます」

そうしたら獄寺くんはぎゅうって俺を強く抱きしめる。少し苦しい、でも愛しいよ。

「だいすきです、十代目」
「俺も、だいすき」

あったかくって嬉しくって俺も強く抱きしめ返す。
力が緩んで獄寺くんを見上げたら、大好きな翡翠の瞳と目が合う。どちらともなく近付いて、そのまま吸い寄せられるようにお互いの唇を押し当てた。
長く触れるだけのくちづけを体温が溶け合うまで、次に少し啄むようにして触れる唇のくすぐったさに自然に笑みが込み上げる。
すると背中に回されていた右手がゆっくりと俺の頭まで動かされ、後頭部を抑えられた。
掻き抱くように更に腕に力が込められたと思ったら、すぐに熱い舌が滑り込んできて戯れるようなくちづけは、貪るように深いものに変わる。

「んんっ…」
(腕に力、入りすぎだよ)

俺はどこにも行かないよ。


「…はっあ、…はあっ」

やっとの思いで離された唇は、思い切り酸素を取り込んでもまだ名残惜し気に冷たさを感じてしまう。


「…一つだけ、欲しいものがあります」

息を整えてから獄寺くんは決心したような顔でそう言った。

「良いよ、何?」
「すげぇ我が儘っスよ」
「良いって。今日は特別なんだから」

(なんとなく予想は出来るけど)


すると獄寺くんは凄く真剣な、それこそ俺の前では笑顔か泣き顔か情けない顔がほとんどで、なかなか正面から見ることは無い程頼もしくキリリとした、本当にかっこいい顔で俺を見詰めて、


「貴方の全てを俺にください」


ああほら予想通り。
俺がきみにそんな顔で真剣に言われたら、断れるはず無いのに。

「全部かー、わがままだなあ」
「貴方には貪欲なんです」
「知ってるよ」

(俺だってそうなんだから)

わざとおどけるように言えば、優しく不敵に笑うきみが居る。
知らないでしょ、そういうきみのたまに見せる見慣れない表情を見る度に、初恋みたいにときめいてしまう俺を。

「よろしいですか?」
「もちろん」

気障ったらしい台詞も、ソファーから俺を抱き上げて軽々しく横抱きにする仕草も、獄寺くんだから本当にかっこいいんだ。


「十代目、来年と再来年の今日もまた、俺の隣に居てくれますか」
「…十年後も二十年後もそのつもり」

俺が笑ったらきみも笑った。
ねえ、きみは今幸せかな。多分そうだとは思うけれど。
俺までこんなに嬉しいから。

ねえ獄寺くん、誕生日おめでとう。本当に本当におめでとう
きみを産んでくれたお父さんとお母さんにありがとう
俺と出会って、傍に居て、俺を愛してくれてありがとう
俺はきみがだいすきだよ


「俺幸せです、世界一しあわせです」
「うん」

ねぇ
ごくでらくん ごくでらくん


「生まれてきてくれてありがとう」

















こうして歳を重ねるたびに
きみがずっとしあわせでありますよう

(願わくばその隣は俺だけのもので)





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2008.9.9.

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