手をつなごう
それだけで
あったかくって、すごく幸せ。
「十代目、」
「ん?」
「手ぇ繋いでもいいっすか」
補修が終わって、帰り道。
山本と別れてからすぐ、意を決したような表情で獄寺くんは真っ赤になりながら俺にそう言った。
(そういえばまだ)
(手を繋いで無かったんだっけ)
そう頭の片隅で思いながら、なんだか無性に体の真ん中辺りが嬉しくってあったかくなったから、そのまま右側の獄寺くんをぼーっと見詰めたまま、言葉の意味を噛み締める。
「あ、あの、…やっぱり嫌でしたか…?」
「え?あ、いや、違う違う、」
あまりに俺からの返事が無いから、獄寺くんはしゅんとなって今にも泣き出しそうな顔で俺を見詰めてきた。
ごめんね、違うんだよ、嫌なんかじゃないんだ。ただね、
「なんだかすごい嬉しくって」
いつもは素晴らしいですだの、大好きですだの、恥ずかしげもなく言う癖に。
肝心なところできみは奥手で俺が1番優先で。
そんなに我慢しなくてもいいのにって思ってたから。
「やっと手、繋げるね?」
「…じゅうだいめぇ」
本当に嬉しかったから笑ってそう言ったら、獄寺くんは感無量とばかりにまた幸せそうな泣きそうなような顔で、うれしーです!と言いながら、目をゴシゴシと擦った。
(あーあー情けない顔だなあ)
「俺ほんとーに幸せです!」
「うん、よしよし。ほら、手」
(でもそんなきみだって大好きなんだ)
とびきりの笑顔でそう叫ぶから、俺まで嬉しくなって、思わず自分より背の高い獄寺くんの、綺麗な銀色の頭をなでなでしてあげた。
「はいっ、失礼しますっ!」
嬉しそうに、でも震えながらきみが触れてきた左手が俺の右手とぴったりくっついて。
いわゆる"恋人繋ぎ"で、ぎゅうって絡まるきみと俺。
「あったかいね」
「はい!とても」
俺より大きなきみの、骨張った優しい手。
小さい俺の手は、獄寺くんにすっぽり握って貰ってるみたいだけど、繋いだ手から全身に、彼の全てが流れてくるみたいな気持ちになる。
(ねえ、きみには届くかな、)
「獄寺くん、」
「はい」
もうすぐしたら家に着いてしまうから。
この手が離れてしまう前に、
俺の手からきみの手に、全部全部流れていけばいい。
「大好きだよ」
満面の笑みで見詰めたら、柔らかく笑う、心底幸せそうな獄寺くんの穏やかな顔。
(その顔は反則だ、)
「十代目」
「うん」
「俺も、」
(かっこよすぎて、どきどきする)
「愛しています」
「…ありがと、獄寺くん」
ほら、繋いだ手から
きみへの愛が止まらない。
(遠回りして帰ろっか)(…はい!)
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