あつい夏の日貴方と二人で 貴方と両想い、 それだけで幸せなんです 夏の日の昼間。 空は見事に快晴で雲一つない、まさに夏の見本のようで。 とてもとても暑い日だ。 とは言っても、学校はとうに夏休みに入っているから、わざわざこの独特の張り付くような暑さの下に体を晒す必要もない。 だがしかし、それでも俺が蒸し暑い空の下を駆け足で通り過ぎて来たのは、愛してやまない十代目にお逢いしたかったからだ。 夏休みも半ばの今日、宿題をやるという名目で呼ばれたのをいいことに彼の家にお邪魔することになっていた。 だから今俺は十代目の部屋に上がらせて頂いている。 炎天下を走って来たから汗が服に張り付いて不快だったが、十代目にお会いしたらそんな気持ちも吹っ飛んだから不思議だ。 部屋はクーラーが効いていて涼しくて。 目の前の小さめのテーブルには、なんと十代目直々に入れて下さったジュースが二つ、そして二人分の夏休みの宿題の山と。 その真向かいに、 俺の大好きなひとが居る。 「十代目」 何か解らない所はありますかと問えば、大丈夫だよと応えてくれる笑顔が眩しい。 さすが十代目素晴らしいですと心から褒めたかったが、この方は過剰に褒められる事を嫌い謙遜なされるから、俺はあえて我慢する。俺にはとても真似出来ない、本当に渋いお方だ。 だから俺は代わりに俺に出来る最上級の笑顔を向ける。 それが精一杯、俺が貴方にしていいこと。 別に言われた訳ではない。 ただ俺が、十代目と両想いになった大切なあの日に、心にそうと決めただけ。 本当は今すぐにでも抱きしめたいなんて思わないと言えば嘘だけれど。 誰よりも何よりも大切だから、俺の汚い下心でキレイな貴方は汚せない。 だから今は、少しだけ照れたようにまた笑って下さる貴方を見るだけで幸せで。 というか可愛いすぎますよ、十代目。 ああもう、このままずっと貴方だけ見ていられたらいいのに。 「‥ねぇ、獄寺くん」 「はい、なんですか?」 ああ貴方のその声が大好きです俺。 いや声だけじゃない。 もう容姿性格渋さ、どれをとっても素晴らしい。 ‥いかんいかん、十代目は何かおっしゃりたくて俺の名を呼んだんだ、すぐに返事をしておいてこんな思考では渋い彼にはついていけないではないか。 何か解らない問題でもあったに違いない、すぐに教えて差し上げなければ。 「どの問題が解らないんですか?」 「へ?‥あ、いや違くって‥」 何故かは解らないけれど、若干俯いて目をそらす姿は本当に可愛いが。 何かあったのだろうかと考えると少し不安になってくる。 「あのさ」 「はい」 「見すぎ」 「はい?」 「だから‥さっきから俺の事見すぎなの、きみは!」 ぽかんとする俺に対して、十代目のお顔は本当に赤くて。 ああなんて可愛いんだろう。 なにせお付き合いしてまだ日が浅い。想いが通じたは良いがどうにもぎこちなくて。 しかし俺はそれでも構わないと思うのだ。 確かに抱きしめたいし、キスもしたい。 触れ合いたいなんて、貴方を目にすればいつだって思ってしまうけど。 それよりも、きれいなきれいな大事なひと。 もともとお傍に居られるだけで幸せだったはずなのに、傲慢なことにどんどん欲が増していく醜いこの俺を受け止めて下さった貴方だから。 ゆっくりと、愛しあえたらそれでいい。 「すみません、余りに貴方が好きになってしまったので」 「‥よくそんな恥ずかしい台詞を‥」 目線を外して唇を尖らせる貴方の顔が更に赤く、赤くなる。 俺の気持ちは伝わっているようで、本当に嬉しい。 「嫌でしたか?」 心底残念そうな顔で貴方を見詰めて。 少し、本当に少しだけ、貴方へのいじわる。 「‥嫌じゃ、ない」 俯いて伏せがちになる目が僅かに揺れる。 暫くして見詰められた蜂蜜色の澄んだ瞳がとても扇情的で。 「‥すごく、嬉しいよ‥」 か細くて、消え入りそうな声なのに どうしてだろう、俺の心を捕えて離さない。 「‥じゅーだ、いめ」 情けない程に声がしっかり出なくて、動けなくて、体がどうしようもなく熱い。 貴方から目が離せない。 「わっ!獄寺くんっ‥!」 貴方の焦る声を耳元で聞いて、俺は貴方を抱きしめているんだと理解する。 壊れてしまうんじゃないかと思うほどに細い体を、優しく抱きしめたいのに制御が出来なくて。 壊れてしまわないだろうかと不安に思うのに、速く動く鼓動は止められなかった。 「獄寺くん‥熱い、よ」 「すいません、もう少しだけ」 クーラーが効いているはずの部屋なのに、貴方と触れる部分から こんなに熱い、熱が強く伝わって。 いっそ貴方と溶け合ってしまえたらしあわせなんて思いながら。 「あつい、ね」 「はい」 太陽よりもあつく また今日もお互いに焦がれてく (好きだよ)(俺もです) (大好き)(愛してます) [次へ#] [戻る] |