喫茶≪サボタージュ≫へようこそ! 元探検隊エースの実力 探検隊《マルセイ》の仕事が一段落したのを見計らって、今日も《サボタージュ》へと繰り出したキモリのマーチは、扉にかかる《CLOSED》のプレートに首を傾げた。 今は昼の真っ直中、軽食も扱う《サボタージュ》にとっては、掻き入れ時であるはずだ。それが、休業中。 「もしかして、ビスコに何かあったのかな…」 「あれぇ、相棒?」 心配になったマーチが《サボタージュ》の扉に手をかけたところで、彼の背後から明るい声がかかった。 「ビスコ! それにようかんも!」 声の主は喫茶《サボタージュ》店主、リザードのビスコだった。彼女の後ろに続くヨノワールのようかんとともに、いくつかの木材を肩に担いでいる。 「わざわざ来てくれたトコに悪いけど、今日は休みなのよ。夜までには何とか再開できそうなんだけど」 「何があったの? それに、その板…」 マーチの問いに、ビスコは「それがさぁ」と軽い調子で答えてくれた。 何でも、昨夜の営業時間内に、性質の悪い客が来たのだそうだ。 誰にだって夜のテンションというものはある。故にそこまで強く言わないのがビスコの信条だが、その客は給仕のヤミラミたちに絡み、ビスコに絡み、挙げ句の果てには他の客にもいちゃもんをつけてきたらしい。 「さすがにあたしもイラッときちゃって、ちょーっとおどかしたつもりだったんだけど、そいつってば気絶しちゃってさあ。テーブルも焦げちゃうし散々よ」 どおりで昨夜はギルドの方角が騒がしかったわけである。おそらくその無知で哀れなお馬鹿さんは、ビスコの炎の鉄槌を受け、今頃ギルドで介抱されているのだろう。 ビスコの話を苦笑いしながら聞いていたマーチは、自分がいつの間にか金槌を持たされていることに気がついた。 「ビ、ビスコ?」 「こんな時間からウチに来るってことは、《マルセイ》の方は暇なんでしょ? ちょっと手伝っていってよ」 そう言うビスコは、薄い木の板を縦に支えて、ヤミラミたちがそれを切り抜くのを手伝っている。ビスコたちが担いでいた木材は、テーブルの材料だったらしい。 「ああ、ようかんも手伝わされたクチなんだ」 「…やかましい」 喫茶《サボタージュ》は、貴方のご来店を心よりお待ちしております。 元探検隊エースの実力 (見事な黒こげだね、ともだちっ) (お館さま、ケガ人のトラウマをほじくり返すのはやめて下さいっ!) [*前へ][次へ#] |