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我輩はピッピである
スーパースター

 わたしの名前はフランシス、ピッピだ。

 わたしの主はナナカマド博士の元でポケモン研究を行なう傍ら、シンオウ神話学にも造詣が深い。

 巷では最近、ポケモン映画なるものが流行している。元々ポケモンを主役にした映画は数多くあるが、ポケモン映画の本場、ポケウッドによる、旅のポケモントレーナーにアドリブで演技させるという、B級バラエティのような企画が功を奏したようだ。

 脚本や演出はプロが監修している上、ジムリーダーが戯れに客演することもあるため、意外と侮れない出来になっていたりする。また、ネット配信で安価に購入できることも流行に一役買っているのだろう。

『いやー、今回も面白かったわね!』

『いい笑顔してるところ悪いけど、大概悪趣味よねえ、アンタ』

 パソコンの前で満足げな表情を見せるナエトルのマリアの後ろで、呆れた顔を見せるミミロップのマノン。彼女の隣でガタガタ震える毛布の塊の中には、グレイシアのオリビエが現実逃避の真っ最中である。

『もうスタッフロールだから出てきても大丈夫よ、オリビエ。フランシス、チビたちは?』

 主のところに避難させてあるよ。いくら虚構の化け物とはいえ、スプラッターを見せるにはまだ早いのでね。

『やっぱキョウは「恐怖! 悪夢の赤い霧」よねー。あの恐怖に染まった表情がたまらんわ』

 マリアは近頃頭角を現してきた女優が気に入っているらしい。主とそう変わらない歳であろう彼女は、様々なジャンルの映画に出演しては、いい仕事をこなす期待の新星だ。

 わたしは「タイムトラベラー」が好きなのだが、ホラー・スプラッター系が好きなマリアにはなかなか理解してもらえない。加えて言うならば、マノンはアクション系、オリビエはコメディ系が好きなので、毎日パソコンの前は押し競饅頭状態だ。

『セクハラオヤジ。つーかアンタの目的はキョウじゃなくて、キャストのシンボラーでしょうが。ミステリアスー、とかって、ただの能面じゃん』

『バッカ、あのクールな雰囲気がいいんでしょうが。色ボケ兎のくせに見る目ないんだから』

『あ、明日こそは「OL・ザ・ジャイアント!」の最新作を…』

 オリビエの控えめな主張は、声を揃えた女性陣によってあっさり却下されてしまった。この分だと、わたしの意見も通らないだろう。やれやれ。





スーパースター
(ポリスジュードー、セイッ!)
(せいっ、なのー!)
(ああ、チビたちが妙な言葉を…)


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あきゅろす。
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