誘導尋問(縢+宜野座) ―――何色の下着がお好きですか? 「え?下着?って何、急にどしたの」 唐突な問いに、縢は口を開けて菓子を放り込もうとしていた手を止めて、目をぱちくりとした。 「慎也さんにいくら訊ねても教えてくださらないから同じ執行官の秀星さんの意見を参考にしようかと」 「コウちゃんにそんなこと聞いたの?それ逆効果だって!」 ぶははっ。縢は言われた狡噛の顔を想像しようとして己れの想像力の乏しさを知った。 「そんで、俺が答えたとして。その下着つけてくれんの?」 「まさか。秀星さんと慎也さんの趣味は全く違いそうですもの。それ以外の色にします」 「消去法かよ!」 彼女は要領がいいわりに、よく回りくどい方法をとることがある。まぁ本人に訊くのが手っとり早いのだろうが、その本人が答えないというのだからそうするしかないのだろう。 「それ、俺の意見だけでわかるの?」 「まさか。一係のみなさんに答えていただく予定ですわ」 「それって俺と征陸のおっさんのことだよな?」 「あら、もう一人いらっしゃるではありませんか」 「ムリムリムリムリ!」 誰のことを言ってるのか正しく理解した縢は超振動顔負けの速さで首と手を横に振る。 「ちょうどいいところに本人が」 「げ」 というわけで。 ―――何色の下着がお好きですか? 「は?」 突然問いかけられた本人―――宜野座が、先ほどの縢と似た反応をする。違うのはその次に眦(まなじり)をつり上げたことだろう。 「何故そんなことを聞く必要がある」 ですよねー! ただでさえ背が高いので見下すように睨まれると、とても迫力が増す。 縢は自分は悪くないのに条件反射で謝りたくなった。撰華ちゃんはやく謝って! しかし撰華は宜野座の返しも予想していたのか更に、にっこりと微笑み返した。 「課題で『犯罪係数が及ぼす色彩嗜好の傾向』をテーマに、潜在犯とそうでない方の好む色の傾向をそれぞれ調べて論文にしようと思っていますの」 (すげー!) よくもまぁペラペラと口が回るもんだ。口の軽さではあまり人のことを言えないクチだが、彼女の場合、これで犯罪係数が低いのだから不思議だ。 「何故下着なんだ」 「服やアクセサリーだとどうしてもその時の流行や季節感に囚われて偏るんです。その点、下着は本人の本当の好みがわかりますから」 「なるほどな」 え、信じちゃうんだ!? 顎に手を添え、真剣に考え始めた宜野座に、答えてくれるのかよ、と縢は心の中だけでつっこんだ。撰華も同じことを思ったらしい。 「慎也さんにも同じ手を使えばよかったかしら」 「撰華ちゃん心の声がでてるよ」 「あら失礼」 目の前で手とか言われたのに考え事の最中で宜野座には聞こえていなかったようだ。これだから優等生は。 「黒か、紺だな」 宜野座の答えに、撰華と縢は同時にギュッと眉頭を寄せて、顔をしかめた。 「・・・意外、ですわね」 「は?」 「ギノさんセクシー系が好きなんすか?」 「なんだと?」 「でも紺だと清楚系ではないです?」 「おい、人の話を」 「いや、濃い色はだいたい肌とのコントラストで・・・なに?ギノさん」 人の話を聞け!と叫んでようやく二人の緊急会議は止まる。 「どうして黒や紺のトランクスだとセクシーになるんだ・・・ってなんだその生暖かい目は」 ギノさんトランクス派なんですね。 誘導尋問 (自分の言っちゃうとか!) 「秀星さ〜ん!」 「ん〜?どったの撰華ちゃん」 「この間の論文が賞を戴きましたのよ。誉めてくださいな♪」 「え?!マジで論文にしたの?」 「えぇ当然ですわ!嘘はよくありませんでしょう?」 「うわ〜・・・マジじゃんこれ俺の意見も入ってんの?」 「もちろん!とっても参考になりましたわ!」 「・・・これ、俺ももらっていいの?」 「ふふ、どうせなら装丁したものを差し上げますわ」 後日、家に届いた硬い感触に、少し感動してしまったのは誰にも言えない秘密である。 ラジオドラマにたぎってしまった縢可愛いよ縢。 ギノさんにセクシーて言わせてみたかった。後悔はしていない。ギノさんは絶対童t・・・おっと誰かきたようだ。 [戻る] |