白いキャンパスの裏側(征陸+狡噛) *『白いキャンパスの向こう側』の直後。 「とても良いものを見せていただきましたので、そろそろお暇(いとま)します」 「そうか?じゃあ気ぃつけてな」 「はいっ」 ふふ。と上品な笑みを浮かべて、撰華が踵をかえす。ふと、立ち止まり、誰ともなしに言った。 「今日はおじさまの絵に免じて許してあげます」 それではおじさま、ごきげんよう。 にっこり。来たときと同じ言葉を残して、ぱか、と口を開けてびっくりしている征陸を放置して、彼女が去った。 目の前でドアが閉まると同時に部屋の奥でガタンと物音がする。 「おうコウ。そんなところに隠れてたのか」 見に行けば、彼女がくる半刻ほど前に匿ってくれと懇願しにきた同僚が、埃をかぶって押入れからでてくるところだった。 いくら見られて困るものは少ないとて、ここが潜在犯とそうでない者の違いかと、征陸は暢気なことを考えた。 「おいどうすんだ。次は許してくれないみたいだぜ」 「みたいだな」 その場に座り込んで俯いてしまった同僚の白い頭を手で払ってやる。 彼女の言葉はあまり大きくなかったが、ちゃんと届いていたようだ。少し罪悪感を滲ませる顔を見て思う。 「良い娘じゃねぇか。将来も有望そうだし」 いろんな意味で。と付け加えれば。白から黒に戻った頭から長い溜め息が漏れる。 「勘弁してくれよ、とっつぁん」 心底困った声を出す同僚に征陸はまた、豪快に笑った。 白いキャンパスの裏側 (それでもきっと、彼は彼女を拒絶しきれないのだ) 実は居ました。 きっとこの後狡噛さんはお詫びに彼女へ何かしてあげると思います。無駄に真面目そうだし。 アニメのサブタイを意識したタイトルにしてみました。 [戻る] |