となりの芝生は青い(宜野座)
「何故お前は廃棄区画へ入り浸る」
「何故、と言われても。必要だから、としかお答えできませんわ」
「御両親が心配するだろう」
彼女の両親は宜野座にとっては恩人だった。母が病気になった時も、甲斐甲斐しいほど援助をしてくれた。父の友人というだけで。親族は潜在犯の血を引く自分に近付きもしなかったというのに。
「頼むから。あの人達を困らせないでくれ」
それは宜野座にとって、幸福をみすみす溝(どぶ)に捨てる愚かな行為だった。
「わたくしは自分の環境が恵まれているのを知っています」
突然始まった自慢に宜野座は眉間に皺を寄せた。
「恵まれた家柄。恵まれた能力。恵まれた容姿」
「自分で言うな」
あぁ、これが縢だったなら、と思う。これが縢だったなら、飽きるまで黙殺してやることができるのに。相手が彼女になった途端に構わずにはいられなくなるのは自分の悪い癖だ。
「でも、だからこそ、わたくしはその環境に甘んじるつもりはないのです」
となりの芝生は青い
(才能があるからと努力を怠ることは果たして賢者と呼べるのでしょうか)
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