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泡の花(狡噛)


※『ご褒美』の続き









「お前・・・子供に施しされて、大人としてのプライドはないのか」
「あーあー聞ーこーえーなーいー!」
「あ、あの・・・!頂き物なので、お気になさらないで」
「ホラ、撰華ちゃんもこう言ってる」
「お前は少し気にしろ」

 人一倍気配りさんな撰華があうあうと困っているので、佐々山の『調教』は後回しにすることにした。
 撰華の目線に合うようにしゃがんで彼女の顔を覗き込む。右膝をついた為、手持ち無沙汰だった左手で彼女の小さな手を掬う。

「はえ?」
「貰った物を人に譲るのは忍びなかったろう。俺の監督不行き届きで君に気を揉ませてしまった。すまない」

 いきなり手を捕まれたため驚く撰華にも気付かず、狡噛が深く詫びる。彼女がほんの些細なことでも、人の思いやりを蔑ろにしない人間だと知っていたからだ。彼女は自分で求めることをほぼしない代わりに、他者から与えられたものを大事にする性分だった。それ故の謝罪だった。部下の不始末は自分の不始末だ。
 しかし、撰華が何も言わないことに狡噛は僅かに不安を覚える。謙遜や遠慮するとこはあっても、彼女が人を無視するところは見たことがない。

「どうした?」

 ぱしんっ。と乾いた音がして、狡噛は目を見張る。じんじんと手の甲が痛むので、先程の音が自分の手が振り払われたことによるものだと悟る。
 しかし、驚いたのは彼女の方がとても辛そうな顔をしていたことだ。

「ご、ごめんなさい・・・!」

 今にも泣きそうな顔で謝ったかと思えば、出勤してきたばかりの職場を出ていった。これは困る。

「佐々山。彼女はいったいどうしたんだ?」

 この場で唯一の目撃者に聞いてみたが、顰めっ面を返された。生憎と非協力的なようだ。

「知るかよ。バーカ!」

 つれない返事と共に、謂れのない罵倒を受けたので、とりあえず蹴りを一発お見舞いしておいた。
















泡の花
(いつか消えるのだとしても)













『ご褒美』のときに御蔵入りになったネタ。なんとか狡噛さん夢っぽくしようとしたら収拾がつかなくなりました。
どうしよう。←
宅の狡噛さんはなんだか暴力に訴える傾向がありますね。すぐに蹴りが飛ぶという。


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