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ご褒美(狡噛+佐々山)



「腹減った〜」

「メシ〜」

「死ぬ〜」
「佐々山・・・少し黙れ」

 これが宜野座だったなら、きっとこんなものでは済まなかっただろう。立ち上がって机を叩き、爪を剥ぐと脅すかもしれない(たまに宜野座の色相は何故濁らないのか不思議に思う時がある)。佐々山もそれを見越して宜野座のいない今言っているのかもしれない。自分はなめられているのだろうか、と不安が過る。しかし『ギノ先生』などと、からかいの対象になるのは大抵宜野座だ。まぁどっちもどっちなのだろう。
 ふと、入局したばかりを思い出した。同時に入局した狡噛と宜野座の新人二人に佐々山はやたら絡み、世話(当時は嫌がらせかと思ったが)を焼きたがった頃があった。どっちが上司か疑問符を付けたくなるそれに、征陸へ相談がてら問うたことがあった。今思えば、そこで先輩である霜月でも上司である禾生でもなく、やはり部下である征陸へ聞いてしまうあたり、自分も人のことは言えない。
 と、話が逸れてしまった。

「だぁって腹減ったら、仕事なんて手につかねーべ?」

 気持ちは分からなくもないが、それは仕事をしない言い訳にならない。

「あと10分だ。我慢しろ」
「あと10分なんだからちょっとくらい早く上がってもいいじゃんかよ〜」

 気持ちはわからなくもない。ないのだが、一つを見逃してしまうと、今後その『ちょっとくらい』が多用されてしまう恐れがある。
 狡噛は心を鬼にして、否を唱え続けた。

「駄目だ。今、俺達がいなくなったら誰が出動するんだ」
「二か三係に任せればいんじゃない?」
「阿呆」

 話にならないな、と、狡噛は溜め息をついた。
 その時、自動ドアが静かに開いて、佐々山が大袈裟に振り向いた。

「ごきげんよう。光留さん、狡噛監視官」
「キター!!!」

 入ってきた、小さな同僚に。佐々山が大振りにガッツポーズをとる。それに入ってきた撰華がちょっと驚く。

「撰華ちゃん、先に上がってもいい〜?」
「駄目だ」
「狡噛には聞いてねっつの!撰華ちゃん一生のお願い!」

 撰華的には構わなかったが、先輩である狡噛の意向を無下には出来ない。撰華は困った。

「どうかされたんですの?」
「腹へって死にそうなんですの〜」
「あと5分だ我慢しろ」
「無理〜」

 なるほど。二人がどういった状態か、撰華はあっという間に理解した。
 それならば対処は決まっている。

「モガッ」

 佐々山の口の中に撰華が硬いものを突っ込んできた。あにすんの?!と返すより先に、口に広がる甘味に佐々山は思わず頬を緩めた。コロコロと、改めて舌の上で転がせば、キリキリと胃壁を溶かしていた胃酸が緩んだように感じる。

「お仕事がんばったご褒美です」

 にっこりと微笑む彼女の手には、年相応のものが握られていて、口の中のものがそれだということがわかる。













ご褒美
(棒付きキャンディー)





















「お前・・・子供に施しされて、大人としてのプライドはないのか」
「あーあー聞ーこーえーなーいー!」

















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あきゅろす。
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