サンドリヨンは榛の夢を見るか(狡噛+征陸) ※『恋の花』の直後 「ご機嫌よう。慎也さん!」 「何であんたは毎日俺の居場所がわかるんだ」 「いやですわね。運命の導きですわ」 いつもの如く。どこから聞きつけたのか、市街で任務があるときには必ずと言っていいほど彼女は現れる。 「んー?どしたーコウ?」 たまたまいた同じ任務だった征陸が暢気に合流し、狡噛が若い女性といることにようやく気付く。どうやら狡噛の巨体に隠れて見えなかったようだ。 「あー・・・俺はお邪魔だったか?」 後はお若い人どうしで、と言って去りそうな雰囲気の征陸のコートを必死に掴む。無言ながらもいっぱいいっぱいな様子の狡噛に、征陸は思わず苦笑してしまう。 「同僚の方ですか?」 初めてみる、しかも狡噛がかなり懐いている様子の人物に、彼女が礼儀正しく名を名乗る。それだけ聞けば、とても清楚なお嬢様に思える。だがすぐに狡噛の太い腕に自身のそれを絡ませてくるから台無しだ。 しかし、それに驚いたのは征陸だった。つい癖である顎の古傷を撫でる動作をする。それくらい彼女という存在は彼に衝撃を与えた。 「お前さん。もしかして、タカんとこの姫(ひい)さんじゃないか?」 征陸の指摘に狡噛へ自身の柔肉を擦り付けていた撰華が、きょとん、とその動きを止める。じっと征陸を見分すると、すぐに両手を合わせ、表情を明るくさせた。 「まぁ!もしかして、征陸のおじさまですの!?」 「知り合いか?」 撰華の反応に眉を上げたのは狡噛だ。潜在犯になって久しいはずの征陸に、撰華のような若い知り合いがいる事実が意外に思えたのだ。 「ダチの娘だ。それにしても俺のことよく覚えてたな。最後にあったのはお姫さんがこんくらいのときだったか?」 そう言って手のひらを自分の膝くらいに合わせる。 「10年くらい前だったか」 「もっと前ですわよ」 「しっかしまぁ、えらく別嬪さんになったもんだな〜俺も年を取るわけだ」 「あら、おじさまったら、相変わらずお上手ですわね。わたくしにおべっかしても、何も出ませんことよ?」 「いやいや紛れもなく本音さ」 うふふ。ははは。そんなに長いブランクがあるとは思えないほど彼らは親密そうだ。 「大空(たかひろ)は元気か?」 「えぇ。父も母も変わらずですわ」 たかひろ。それが彼の友人であり、彼女の父親の名前か、と。狡噛は思案する。いつの間にか蚊帳の外だなんて考えない。 「ん?タカヒロ?」 「?何ですか?慎也さん」 積もる話があるのだろう。談笑に花を咲かせる彼らに、狡噛は待ったをかける。 「どういう字を書くんだ?」 「父の名前ですか?『大空』と書いて『たかひろ』ですけれども」 何故そんなことを聞くんだと言いたげな撰華だが、狡噛の内心はそれどころではない。彼女の父親ならば、彼女と同じ名字ということだ。撰華はまだ未婚、のはず。 彼女の氏名など初めて出会ったときに一度聞いたきりだったが。その珍しさと人物の強烈なインパクトで覚えてしまっている。何より、誰かと同じ名字だと思ったのだ。 「なんだコウ。知らなかったのか?」 狡噛の混乱を流石は年の功か読み取り。征陸が面白げに言う。 「こいつは神鳥風撰華。神鳥風大空事務次官の娘だぞ」 サンドリヨンは榛の夢を見るか (よかったなコウ。逆玉って奴じゃないか) (とっつぁん・・・マジで、本当に勘弁してくれよ) 本当にお嬢様だった! というわけでお父さんはとっても偉い人でした!どこの事務次官にするかはまだ考え中です。 征陸さんとは刑事時代の同期でバディを組んでた親友でした。シビュラ導入時に征陸さんは現場残留、お父さんは高官への適正がでたので現場が動きやすいようにとエリートの道へ。 青島と室井さんというよりは和久さんと警視総監の関係が理想(笑) 仮タイトル「逆玉の輿」(爆) [戻る] |