真面目なお兄さんの言うことにゃ(狡噛)
*『エロいお姉さんの言うことにゃ』の直後。
「志恩」
「なによ〜ぅ、慎也く・・・痛ッ!」
宜野座の強要に「パワハラよ〜」と嘆いていた唐之杜は狡噛に呼ばれて顔を上げ、止めをさされた。
なだらかな彼女の額に、狡噛の親指によって弾かれた中指の第一間接までが勢いよく埋没した。曰く、デコピンだ。しかし、ただのデコピンではない。まず音が凄い。肌を弾くどころか骨までめり込むような鈍い音だった。次に威力。たかが指一本と侮るなかれ。衝撃で唐之杜の首が90度上へのけ反った。全身鍛え上げている狡噛。勿論、握力や指の力だって相当なものだ。それを一つの指の爪に集約した威力など、正直知りたくはない。
すっと音もなく背後に立たれて、撰華は思わず戦慄した。視界の端に、唐之杜がもんどりうっているのが見える。
「撰華」
「わ、わたくしは何も申しておりませんわよ!」
名前を呼ばれて咄嗟に額を隠す。
「違うから」
違うって何が?どれが?
何のことかわからなかった撰華は、はひ?とまぬけな声を出した。
「だから・・・志恩が言ってた」
「ぁ、ああっ『オホモダチ』のことなら誰も信じてませんわよ」
というか、言い出しっぺの志恩ですら本気で思っての言葉ではなく、質の悪い冗談のつもりだっただろう。
「そっちじゃない」
「え?」
「だから・・・」
ますますわからないという顔をした撰華に、狡噛は少し逡巡したあと、まだ額をガードしていた彼女の細い手首にやんわりと手をかけ退けさせる。空いたスペースに自分の頬を滑り込ませて、そっと耳許で囁いた。
「嬉しくないわけじゃ、ないからな」
それだけ言って、早々に離れていった。彼の顔を見ると、ばつが悪そうに視線を逸らされた。照れているのだろう、少し頬が紅い。
撰華は一瞬だけぽかんとした後、ホールドアップ状態で固まっていた自分の両腕を前へ突きだし、目の前の狡噛の首へと絡めた。
「慎也さん好きです!」
「はいはい」
しんやさんしんやさんすきすきだいすきわかったわかったからはなせいやですいやですはなしませんわー!
巻き付いて離れない撰華を狡噛は叱りつけるが、その声はどこか優しい。腕は撰華の背に回しているあたりちゃっかりしている。
真面目なお兄さんの言うことにゃ
(なんだ。あいつらはまだまとまってなかったのか)
(宜野座さんにですら言われてしまうなんて・・・)
(どういう意味だ常守)
(え?あっい、いや・・・)
(日頃の行いじゃないですか)
(ほんと、じれったいわ〜)(復活した)
女性陣のガールズトーク聞きたいな!という話でした。
朱ちゃんが入る頃には狡噛さんも大部ほだされちゃってる感じですね。もうお前らくっつけよ!(周囲の意見)
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