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エピメテウスの葛藤(常守)



「ついてないなー」
「また何かあったんですか?」
「わかる〜?」

 これみよがしに隣でため息を吐かれれば、わからないほうがおかしい。
 話を聞けば、また一係のメンバーの触れられたくない過去を、知らず、踏み抜いていたらしい。らしいというのは、その触れられたくない過去がなんなのか彼女にはよくわからないからだ。何故怒らせてしまったのか、誰に聞いても教えてくれない。ただ「地雷を踏んだ」としか。らしいというしかないだろう。

「私は日常会話のつもりだったのに〜!」
「それは、なんといいましょうか・・・御愁傷様ですわね」
「う〜異動願い出そうかな〜」
「朱さんは後悔してらっしゃるの?」

 冗談のつもりだったが、少し驚いたようにいう撰華に、改めて考える。

「後悔・・・というか、向いてないのかなーとか」

 犯罪者を狩る仕事、なんて。向いていると言われても、全然嬉しくはない。それくらい、彼女の中ではまだ愛着も誇りも確立していなかった。

「肉体的にハードなのはいいんだ。事務処理だって嫌いじゃないし」

 ただ、と続ける。

「ここの人たちってみんな独特な雰囲気があるっていうか、何考えてるか一筋縄じゃいかないというか」
「良い言い方で『個性的』悪い言い方で『変人』ということですわね?」
「ぐっ」

 オブラートでくるんだ言い方をしたが、ぶっちゃけるとそういうことだ。

「言うことやることハチャメチャなんだよ?公安なのに破壊的だし、優しいかと思えば怖いし・・・」
「はい」

 優しく肯定されて、とくに促された訳ではないのに、つらつらと喋った。

「縢くんはからかってくるし、宜野座さんには怒られちゃうし」

 言ってるうちに、どんどん内向的な感情がわいてきて、「あ。これ、やめるべきだわ」と本気で思えてくる。

「どう思う?」
「そうですわねー。わたくしには引き止める権限はありませんし」

 後ろ向きな言葉でもまずは肯定される。受けたことはないが、セラピーとはこんな感じなのだろうかと思う。

「後悔がないのであれば、よろしいのでは?」
「後悔、かぁ・・・」

 後悔先にたたず。後悔するとしたら何に対してだろうか。この職場を離れることだろうか。新しい職場でまた馴染めなかったらだろうか。どれもピンとこない。
 しかし、

「後悔、する気がする」
「あら、何故?」
「わかんない、けど」

 絶対する。根拠もなくそう思う。

「ここに来て、大変なことばかり起こったけど。それだけ知らないことがあったんだなって思うし。そういうことを知っていけるのは嬉しい」

 明け透けすぎるがオブラートに包まず、ありのまま教えてくれる人たちだ。今までのシビュラの恩恵で生きるだけでは一生知り得なかっただろう。
 そういう人たちに出逢えたことは。

「ついてるなって思うよ」

 人はよく、過去のことや未来を想って悩むけれど、意外と目の前のことしか見えていない。よく考えたら目の前のものしか見えないのは当たり前か。

「だったら」

 自分の言葉の何を気に入ったのかはわからないが、撰華が嬉しげな視線を向けていた。

「絶対、大丈夫ですわ」

 あ。その笑顔が見れただけでここに来て良かったかも。なんて、馬鹿なことを一瞬考えた。
 いつの間にか辞めようという気は消え失せていた。

「うん。私、ついてるよ」
「そうですわね」
「ついてるついてる」

 うんうんと自分で頷きながら言えば。隣でニコニコと肯定される。ちょっと浮上した。









エピメテウスの葛藤
(きっと何を選んでも人は後悔する生き物なのだ)













朱ちゃん可愛いね!回を追うごとに愛しくなるよ!これからもいろんな人の地雷を踏み抜いてって欲しい。そして狡噛さんの裸体をもっと眺めさせて欲しい。(それはスタッフにry)ヒロインとはキャッキャウフフな関係でいてほしい。
仮タイトル「五月病」でした(笑)

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あきゅろす。
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