命題(夢主+リボーン)日記ログ (+10) 微笑みを浮かべ、ただひたすらに星を眺める姿は彼女のようだ。 その直向きな想いも、覚悟を秘めた心も、美しい魂も。 この少女は彼女に似ていた。 「私は運命なんて信じない」 「あぁ、オレもだ」 だけど、言っていることは似ても似つかなかった。 彼女は星の流れを読み、世界の行く末を見つめ、それを後に伝える役目をしていたのだから。 「未来なんて、とるに足らないことだわ」 運命すらも覆すような信仰は、吹き荒ぶ風のようだ。 「皮肉なものね。それでも生き物は親を選べないのだから」 生まれる時も。生まれる場所も。生き物は自分で選ぶことは出来ないのだ。 「私は自分の生き方に後悔はしないわ。出来ればこの子もそうであって欲しい」 そう言って、もう臨月を迎えた腹を撫ぜる。その姿も似ている。 「あぁ・・・そうだな」 子供は親の生き方に影響を受けずにはいられないものだ。 どんなに彼女の心が気高くあり続けても、生まれてくる子もそうとは限らない。 「・・・本当は、この子を幸せにする自信なんてないの。この子は私じゃないわ。違う、生き物だもの」 いつか、我が子に詰られるのかもしれない。何故、幸せから遠ざかるような人生に自分を巻き込んだのか、と。何故、幸せにする自信もないのに自分を生んだのか、と。それはとても哀しい。 「この子を、巻き込みたくはない。だけど、誰かに引け目を感じて生きるのは何か違うと思うの」 それでも、誰かを愛しいと思い。結ばれることの尊さを、間違いだなんて思わない。 「この子にも。胸を張っていきたい」 いきたい。行きたい。生きたい。 「大丈夫だろ。お前の子だ」 「ふふ。ありがとう」 永遠に続く幸せなんて信じないと彼女は言った。 日常なんて恒に前触れもなくある日突然跡形もなく壊れ崩れ落ちるものだ。 それは逆らいようがない濁流のように滔々と訪れては自分たちをあっさり押し流していく。突然襲い来るそれは言葉に当て嵌めるなら“運命”と呼ばれるものなのだろう。 それでも彼女は悲観してそう言ったのではない。 「私、幸せになるわ」 喩えこの世に生を受ける前から決められていた運命(さだめ)なのだとしても。 きっと、と呟いた彼女の微笑みは、今でこそ幸せそうで。 「幸せは永遠ではないわ。誰にとっても。だから私は幸せが壊れることを恐れても、それから逃げたりはしない」 いつか終わりがくる、その時までを。 悔いなく、咬み締めて生きる。 それはかくも容易く───難しい。 「見ててね」 命題 (幸せになってみせるから) 掲載日(09/08/30) [*前へ][次へ#] [戻る] |