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おるすばん








「俺とルッスーリアは今日から任務でいねぇ!その間はお前がコイツの面倒を見ろぉ゙お!」


 頭の上にある重い被り物が吹き飛びそうな騒音にフランは顔をしかめる。


「えー冗談は名前だけにして下さいよー」
「よーしいい度胸だかっさばく!」
「あっ間違えましたー「名前だけ」じゃなくて「声も」でしたー」
「どーゆー意味だぁ゙ー!」


 そのままの意味だようるせぇな。

 フランは心の中で毒を吐いた。心の中に留めたのは口に出したが最後、更に声を張り上げられるに違いないからだ。
 というかここ、ヴァリアーは、裏社会でも恐れられている暗殺部隊の筈だが、いつの間に託児所になったのだろうか。


「めんどくせー」


 役立たずどもめ。ポツリと本音を溢せば指が暖かいものに包まれる。
 何だろうと思って覗きこめば、自分の指を掴む小さな手。しかしその顔はスクアーロの方へ向けられていた。


「ぼく、ひとりで、おるすばん、できます」


 健気に漏らされた言葉は、スクアーロからすれば有難いのだろうが、それは、あくまでその言葉が実現可能なことであれば、だ。幼子がどれだけ他人に迷惑をかけまいと意気込んだところで彼に責任能力が皆無である限り、スクアーロにはその意気込みこそがありがた迷惑である。


「でもなぁ゙お前ぇ飯とか自分で作れねぇだろぉ゙」
「ルッスーリアさんが、つくってくれたごはんが、れーとぅ、こ、に、いっぱい、あります。みなさんの、も」
「マジですかー」


 幼子の言葉にいち早く反応したのは、心配事が減ったスクアーロではなく、フランの方だった。


「ミーの分もあるんですかー?それは初耳ですー」


 ヴァリアーの幹部のご飯は基本的にルッスーリアが(何故か)作っている。なのでルッスーリアがいないときは各々外食などをして済ましているのだが、もしわざわざ外出しなくても食事にありつけるならそれに越したことはないだろう。何よりルッスーリアの料理はそこらの三ツ星レストランよりも美味しいのだ(流石ヴァリアークオリティ)(無駄に)。


「ぱすた、とか。りぞ、と、とか。たくさんつくって、くれました」
「なんか聞いてたら小腹が空きましたねーさっそく食べましょうかー」
「!だ、だ・・・っ、ダメ・・・ですっ!まだ、ごはんの、じかんじゃ、ない、です!」


 幼子に手を捕まれたままフランは本能の赴くままに歩きだす。必然、引きずられる形の子供はそれでも掴んだ手を離さず、フランを引き止めようとするが、悲しいかな、ほとんど足が浮いた状態の子供の力では、暖簾に腕押し、波に飲まれる海藻である。
 スタスタと歩くフランに、陰の如く付き添う黒い兎耳のついたフードを眺めながら、スクアーロは半ばやる瀬ない気持ちで二匹の子供を見ていた。どっちがどっちの面倒を見ているのかわかりゃしない。
 ただ、いつの間にか繋がれている指を見て、なんとなく、なんとなくなんて不確かな言葉をスクアーロは好まないのだが、ただなんとなく、大丈夫かも、と思ってしまった。ぶっちゃけ投げやりだ。
















(ルッスーリアさん、に、れーぞーこ、のカギ、もらいました)
(ちぇっ、ミーたち信用ゼロですねー)














御子様は獣耳(付フード)着用です。今回はウサ耳ですが、あとクマ耳とネコ耳があります(いずれもルッスーリア作)。

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