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空の器(09雲雀生誕)拍手ログ



「ねえ君、こんなところで何してるの?」


 校庭の裏庭、雲雀は自分の特等席で昼寝をしていた。しかし、声をかけられて、木の葉の落つる音でも目を覚ましてしまうほど敏感な彼は無理やり覚醒を促された。


「何?何か用?」


 ちょうど気持ちよく寝ていたところを邪魔されて、雲雀はムッとする。しかし、眠い。今日はとても天気が良く日差しが暖かい。とにかく寝ていたい。咬み殺すのも億劫だ。雲雀はごろりと寝返りをうって声とは反対のほうに向く。
 雲雀の不機嫌さが伝わったのだろう、声の主が若干戸惑ったような気配がした。


「用ってほどでもないけど、どうして休みの日に学校にいるのかと思って・・・」


 今日は一般で云う休みにあたる日、しかも連休中だ。学校に人がいるのはおかしい。


「じゃあ君こそどうしてここにいるの」
「わたしは部活ですよ」


 今度は声の主が胸を張る気配がした。正当な理由があるのだと。

 だが、雲雀にはそんなこと関係ない。



「ぼくはここが好きだからここにいるんだ」



 そう言えば、相手が黙り込んだ。きっと、虚を突かれたのだろう。姿は認識してないが、きょとんとする空気がした。


「そっか」


 ふと、相手が声をたてた。


「好きならしょうがないね」


 酷く可笑しそうなその声が、少し気にかかった。


「ごめんね。お昼寝の邪魔して」


 まったくだ。と思ったが、それを言うことすら睡魔が邪魔をして酷く面倒臭い。


「これ、お詫びにあげる」


 ことり、と顔の横に何かが置かれた。


「木陰でも、あんまり外で寝てたら熱中症になるわよ」


 それがいいたかったの、と風に揺れる葉音のような軽やかな声を残して、気配が消えた。
 草を食む足音が小さくなり完全に消え去ってから、雲雀はやっと目を開いた。視界にすぐ飛び込んできたのは飲み物が入ったペットボトル。まだ冷たいのだろう、表面には露出した水滴が幾つも光を返して照っていた。

 雲雀は身を起こし、なんとなくそれを手にした。やはりまだ冷たく、ひんやりとした感覚が手に伝わる。
 蓋を開けて中身を喉に流し込んだ。どうやら自分でも気付かないうちにかなり水分を消費していたようで、結構な勢いで飲んでしまった。冷たさが身体に溶け込むようで気持ちいい。
 少し時間をかけて、全てを飲み干してしまってから、雲雀は辺りを見回した。声が去っていった方を見ても、やはり誰もいない。覚えているのは声だけ。しかし、それさえも冷たい濁流に流され、記憶の隅に追いやられてしまった。
 雲雀はなんとなく、空になった容器をふところにしまった。あとで誰かに捨てさせようと思う。








の器
(中身の無いプラスチックはいまだ冷たさを残して存在を主張していた)












雲雀さん誕生日&アンケート1位おめでとう!

てな訳で、1日限定小噺でしたー。
どうしてもフライングになってしまうので、今日だけの限定話です。

ヒロインが1年。一応5月5日の出来事なのですが、わかりましたか?それとなく匂わせる文があったのですが・・・

誕生日プレゼントはペットボトル1本。しかもヒロインの性格上、部活中の飲み物は水だろうと思うので、きっと100円ぐらいでしょう。あは(笑)

でも祝う心が大事だって昔ばあちゃんが言ってた!(ヒロイン誕生日って知らないよね?)


ちなみに雲雀はこのときはまだ学ランではなくブレザーという設定。(どうでもいい)
この時点での面識はお互い無し。







掲載日(09/05/05)









2年も経つのにまだ雲雀を出せてないことに絶望した!
もうフライングとか言ってらんねぇ!


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