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白い部屋(19骸生誕)拍手ログ





 たどり着いた空間の白さに骸は嗤った。目当ての部屋の主を探すと空間の真ん中でぼんやりと座り込む金色を見つけた。
 灯りとりの窓も何もない場所なのに何故かお互いの姿が見える。しかし、不思議ではないのだ。これは夢なのだから。


「相変わらず、貴女の夢は酷いですね」
「あら、いらっしゃい」


 振り向いた“彼女”の今よりも長い髪がサラリと流れ、真っ黒な瞳が存外まっすぐに骸を見返した。それがどこもかしこも白いこの空間で一際浮いている。
 彼女は3歳くらいの幼い子供のなりをしていた。その口からいつもの大人びた言葉遣いがでてくるので違和感がすごい。しかし、骸はその中身が自分と歳の変わらない女子であると知っているので気にしない。
 紅葉のような手を口元に当てながら、幼子に似つかわしくない所作で彼女が「ふふっ」と微笑む。


「またきたの?暇人なのね」


 それはもちろん彼が牢獄にいることを踏まえた上での嫌味だ。


「相変わらずのようで安心しましたよ」


 若干顔を引きつらせてそういうと、彼女がにっこり笑ってまた前を見た。骸の目には白い空間しか見えないが、彼女には別のものが見えてるのかもしれない。


「貴女こそ。こんなところにずっといて楽しいてすか?」


 それは先程の嫌味に対する骸なりの意趣返しだった。彼女が好きでここに留まっているのではないと知った上での言葉だった。
 この空間は彼女の夢の中なのだが、ただの夢ではなく、彼女の精神世界、それも深層心理に近いところなのだ。
 つまり、目の前の光景が、いわゆる彼女の心の闇、しいてはトラウマと呼ばれるものなのだが、闇の部分が真っ白な部屋というのは、みょうちきりんな彼女らしいと骸は思う。
 彼女は相変わらず、骸の嫌味などまるで微風か稚児の戯れかのように、微笑みを返している。


「私にとって、この景色は絶望であると同時に希望だから」


 彼女の呟きが静かな空間に、響く。







い部屋
(きっと忘れたくなくて、ここにいるの)







(掲載日19/06/09)








骸と夢主はわりと性質は似ているので、相性はとてもいいという設定です。ただし、後天的な影響による性格が異なるため、ウマは合いません。
同じ相性のいい凪が何もない無風なら、彼女は嵐のように苛烈で真逆です。


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