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09.特技


「なぁにこれぇ?」
「・・・・・・・・・」

 スタンの聞きたがりはいつものことで、通常ならルーティが「こんなことも知らないの?これだから田舎者は」と、呆れ、「なんだと!」と、スタンを怒らすまでが1クールなのだが今日はそれもない。









特技









「さぁさぁみなさん遠慮せずに食べてください」

 遠慮せずにいられるだろうかいやいられない。何故ならば、目の前には、赤黒い液体が波々と揺れている。食べるっつーか飲むじゃね?というツッコミが過った。
 今日はジゼルが料理当番だったのだが、普段の行動からどんなものがでるのか一同(スタンとルーティだけ)は戦々恐々していた矢先にこれが出てきたのだ。慎重にもなるだろう。
 リオンだけが黙って口を付けている。見たところ、とくに不振な反応はなく、普通に食している。

「初めて見る料理だな。なんていう料理なんだ?」

 グッジョブマリー!
 かくも天然とは恐ろしい。自然と一同の言いたいことを代弁してくれた。

「料理ってほどでもないですよ?シデン領に伝わるもので『オシルコ』っていいます」
「この黒いのはなんだ?」
「小豆ですよー赤飯のが残っちゃってて」
「そのネタまだ続いていたの?!」
「ネタってなんですか?」
「あれ?俺なんでそんなこと言ったんだろう」

 どうやら電波が混線したようだ。

「あ、ほんとだ。甘くて美味しい。」

 口をつけてみると意外や意外。普通に美味しいことに吃驚した。

「意外だなぁ。ジゼルが料理上手いなんて」
「あらやだぁスタンさん御代わりどうぞ♪」
「他には何が作れるんだ?」
「えーと、プリンに、クレープに・・・」
「へーお菓子も作れるんだ〜」

 意外過ぎる女子力にルーティが何気にショックを受けている。

「坊っちゃんの朝食もよく作ってるんですよー」
「へー例えば?」
「ん〜ホットケーキとか?」

 そこで、スタンはあることに気付く。

「気のせいかな、全部甘いものだよね?」
「気のせいではないぞ」

 口を挟んだのは、今まで黙りを決めていたリオンだ。口の端にオシルコついてるよと言いかけてやめた。リオンの表情が真剣だった。

「ジゼルは甘いもの以外つくれないんだ」
「つくれないことはないですよ。ただちょっと苦くなるだけで」

 つまり甘いもの以外は失敗してしまうらしい。

「とくにピーマンとニンジンが苦くなっちゃうんですよねー」

 なんでだろ?と首を傾げるジゼルの側でリオンが震えている。リオンがピーマンとニンジンを嫌いになったのはお前が原因なのか?と誰もが思ったが口にはしなかった。










(これって特技っていえるのかな?特技以外が)(シャラップ)








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