01


 先に見つけたのは、どっちだったのだろうか。ただ俺は、その人を見て、世の中にはずいぶんときれいな方がいるものだなあと思って目を見開いていただけだ。

 だからその人が、どうして俺を見て目を見開いたのかは分からなかった。絡む視線に惹かれるように、その人は俺の前に立っていた。

 太陽の光にきらきらと晒された金色の模様がよく似合う、浅黄色の着物。まだ小さな可愛らしい少女は、迷うことなく俺に手を差し伸べた。

 ボロボロの着物を着た俺は、意味が分からなくて、首を傾げる。


 少女は俺が手を取らないと分かると、怒ったようにぶらんと垂れている俺の手を取った。汚れや傷ひとつない玉のような手が、俺の汚い手を掴んでいる。すぐさま振り払おうと思ったのにそれができなかったのは、少女がない力を振り絞って俺の腕を掴んでいることに気づいたからだった。


「おまえ、どこから来た?」


 京から、下ってきた。そう言うと、少女は目をキラキラさせて笑った。


「ちょうどいい! 京の話を聞かせておくれ! ……それは物語のような雅な世界?」


 俺は苦笑して、すこしずつ、彼女に栄光など今は欠片もない都の話をした。それでも彼女は、楽しそうに聞いた。

 小さな彼女の腕はあまりにも細くて脆い。体はあまりにも軽くて。それでも陽だまりのようにやさしく笑っていた。きっと、いいところの方なのだろう。

 このひとを守りたい。

 空っぽだった胸にわずかに灯った光には、まだ気づかない。それが、信じられないように幸せな、姫さまとの出会いだった。



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あきゅろす。
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