彩雲国小説
過去の運命、未来の約束
※学パロ にょた 2008年クリスマス記念





終業式の後の帰り道、いつものように楸瑛は絳攸を家まで送って――しかしその先がいつもとは違った。
いつもだったら「また明日」と言って別れるのだが、今日は立ち止まって話し込む体勢だ。
「しばらく会えないね。さみしくない?」
「誰がッ」
「はい」
噛みついた絳攸の先手を打つように、楸瑛はにっこり笑って手を差し出した。

「メリークリスマス」
小さな箱を手渡されて、――不意をつかれて絳攸は黙りこんだ。きれいなラッピングがほどこされた箱をまじまじと見つめる。
「何も……」
何も用意していない。動揺する頭でそう言うと、
「うん。私が絳攸にあげたかっただけだから、気にしないで」
楸瑛は絳攸にしか見せない優しい笑顔で笑った。
その代わり、と楸瑛は少し身をかがめて絳攸の耳に口を近づける。

「バレンタインデー、期待してるから」
楸瑛はそのままチュッとわざと音を立てて絳攸の耳に軽くキスを落とした。
「それじゃ」
絳攸は呆然と楸瑛を見送って――立ち尽くしたまま、クリスマス用の赤いラッピング用紙より赤くなった。





自室で一人になって楸瑛からもらった箱を開けると、
「……指輪か」
派手すぎないおさえたデザインが品の良い、瀟洒な銀細工に小さな赤い石をあしらった指輪だった。
「…………」
絳攸はその指を手にとってみて考えこんだ。どこにつけるべきか。
右手にすると勉強する時に邪魔だから、左手。親指、ということはないだろうし、人差し指にも小さすぎる。
順々に試していって、その指輪は――最後の指にピタリとはまった。
左手の小指にはまった、赤い石をあしらった指輪。



『ねぇ絳攸、知ってる?運命の恋人たちは互いの小指が赤い糸でつながってるって』
昔聞いた、楸瑛の言葉が蘇る。



「――あぁ、もう……」
思わず笑みがこぼれた。本当にあの男は。



こぼれたこの笑みは、嬉しいからじゃなくて、絶対に、あきれているからなのだ。






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