彩雲国小説
甘いお菓子を食べよう
※学パロ 2008年ハロウィン記念





「Trick or treat?」
「はぁ?」
下校途中、突然の楸瑛の言葉に絳攸は思い切り胡乱げな眼差しを向けた。
「今日はハロウィンだろう?だからだよ」
「おまえな……アメリカじゃあるまいし、ハロウィンなんてほとんどやらないだろうが」
「まぁいいじゃないか。それで?Trick or treat?」
「残念だったな。学校に菓子なんぞ持ってくるか」
勝ち誇ったように絳攸は笑う。真面目な絳攸がお菓子を学校に持ってきていないのは織り込み済みだった。そしてそれこそが楸瑛の狙い目でもある。
「そう。じゃあ仕方ないね」
隣を歩く絳攸の腕をつかんで歩みを止める。不審そうにこちらを向いたところをすかさず――……。


チュッ。


カアッと絳攸の顔が朱に染まる。この素直な反応が楸瑛にはかわいくてたまらない。
「な、な、なにを……」
「何って……キス?」
絳攸の拳が勢いよく飛んできた。パシッと音をさせて、楸瑛は自分のものより一回り小さい拳を手中におさめる。
「そういうことを言ってるんじゃないッ!こんなところで何を……」
「じゃあ二人きりならいいの?」
二人きり、を強調するとますます顔が赤くなる。
「だからそういう問題じゃないっっ!!だいたいおまえはいつもいつも節操なく……」
よく動く赤い唇を見ながら楸瑛は考える。もう一度キスしたらさすがに怒るか。しばらく口を聞いてくれないかもしれない。それは嫌だ。
「聞いているのかっ、楸瑛!!」
「もちろんだよ」
君が私の名前を呼ぶ瞬間が何よりも好きなんだから。楸瑛は絳攸いわく、胡散臭い笑み、を浮かべた。
「……っ」
何を言っても無駄だと悟ったのか絳攸はきびすを返してずんずん歩き始めた。しかしいつも通りその方向は正反対だ。
「絳攸ー。君の家はそっちじゃないよ」
「うるさいついてくるな!」
「だってそちらは私の家の方面なのだけれど」
ぴたり、絳攸の足が止まる。
「嬉しいね、絳攸から私の家に来てくれるなんて」
「…………」
反応なし。もう一押しだ、と楸瑛はだめ押しをする。
「私の家でさっきの続き、する?」
耳元でささやいて、楸瑛が世界で一番好きなその銀糸の髪に唇を落とす。
「寝言は寝て言え、この常春がーっっ!!」
夜闇の藍が広がりつつある街に、絳攸の怒声が響き渡った。




Juzz Bug様よりお題使用


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あきゅろす。
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