生チョコ (海)
『海くん、海くんっ』
「ん?どうした?」
『えへへー…はい、ハッピーバレンタインッ』
「……」
『……海くん?』
コテン、と首を傾げて俺を見つめてくる愛しい涼。その手には黒いシンプルな箱が握られている。
……ピンクのリボンは涼らしいな。
「そうか、バレンタインか…」
『うんっ。ね、食べて食べてっ』
「分かったからそう急かすな」
『……あっ、ごめん。僕ドキドキしちゃって…』
目を輝かせていた涼は俺の言葉にしゅんとし、そして少し頬を染めてそういった。
その様子から察するに…もしかして手作りか?
そう思ったら手が勝手に動いていた。リボンを外し、蓋を開ける。
「生チョコ…」
『海くんのためにね、ちょっと苦めに作ってみたんだ』
「俺のためにか?…ありがとな」
金色のサラサラの髪を撫で、チョコを一つ食べる。
口に広がるチョコの香りと甘み。苦いって…涼にとってだったのか。
……が、それよりも…俺のために作ってくれたことに価値があるだろう?
「うま…」
『へへっ、愛情たっぷりだもんっ』
「みたいだな。すげぇ伝わってくる」
いつかその愛情が俺だけに向くことを願うよ…。
(チョコよりも、君の気持ちが甘すぎる)
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