6 なんてエエ子やぁあ!若葉はそう叫びながらチョコを渡そうと手を伸ばしていた紅葉を抱き上げ、その場をグルグルと回りだした。突然のことに驚いた紅葉も、キャハハッと可愛らしい笑顔を見せる。 しばらく回ったあと、床に座った若葉に紅葉は再びチョコを差し出した。 「ワイがもろてエエん?ワイのために買うてきてくれたんっ?」 「うんっ!へへーうれし?若ちゃ、うれしーい?」 「嬉しいに決まっとるやん!紅葉からチョコもらえるなん、ワイは世界一の幸せもんや…」 「あぅ、若ちゃ…なかへんでぇ?」 嬉し泣きをする若葉の髪を、紅葉は小さな手でよしよしと撫でてあげる。それにすら若葉は感動してしまい、力の限り紅葉を抱き締めた。苦しそうにする紅葉だが、まんざらでもなさそうだ。 「若ちゃ、好きー」 「ワイも大好きやでぇっ。ホワイトデー、ちゃーんとお返ししたるからなっ」 「ほ…?」 「ホワイトデー。チョコをもろた人が、お返しする日や。男の子が大好きな子にアピールする日でもあるんやで」 「んぅー…?」 「はは、とにかく、楽しみに待っとき。ワイが飛び──っきりの "好き" を返したる」 きっと、お菓子なんかじゃ足りないくらいのこの気持ちのお返しを。それを聞いた紅葉は嬉しそうにはにかみ、約束ね、といってほっぺにチューを交わした。 これが、紅葉が初めて体験したバレンタインの出来事。チョコよりも甘くとろける気持ちは、しっかりと相手へ届くのでした…。 終わり♪ [*前へ] [戻る] |