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「っ…じゃあ、紅葉のほしいもんやるから、作ってこい」
「むぅ、物で釣るのよくな、」
「あ゙ーうっせぇ!…食いてぇんだよ、クソッ」
分かれクソが、と髪をグシャグシャに掻き乱しながら耳を赤くしてそういう桐に、紅葉はキョトンとしたのち、ぶわっと顔を赤くした。
分かっているつもりだった。桐は素直じゃないからあんな言い方をしてしまうんだ、と。でも命令されるのは嫌で、お願いするなら…と思っていたのに、素直になられたらなられたで、なんだかとても恥ずかしい。
紅葉は目を潤ませてそろりと桐を下から見上げ、まだ気恥ずかしそうにしている桐を見て小さくはにかんだ。ああ、好きだな、と改めて思う。
「…何見てんだよ…」
「んーんっ。ほな、ホワイトデーにもっかい作ってくるよ!」
「チッ、始めからそうい、」
「やから桐も手作りのものちょうだいねっ」
「…は?」
「ふふー桐の手作りお菓子!楽しみやっ」
ニコニコと満面の笑みを見せる紅葉に、次は桐が焦る番。まさか見返りに同じ手作りのお菓子を要求してくるなんて、思ってもみなかった。
手作り。そんなものしたこともなければ、自分がやるところを想像することも出来ない。さすがにそれは却下だ、といおうとしたら。
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