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紅葉と犬
「……あっ、わかちゃ、わんわ!」

「んー?わんわ…ああ、ワンワンな。紅葉初めてやっけ?」

「ぅ?…めてっ」

「そかそか。そーいやここらへん、犬少ないもんなぁ。触らせてってお願いしてみよか?」

「わかちゃ、すぅー!」


 ということで、犬の散歩をしていた人を呼び止め、触ってもいいかと聞いた。半ば強引に頷かせたところもあるが、紅葉を見て危ない人ではないかも?と思ったらしい。犬を座らせ、どうぞといってきた。

 ……が、紅葉はなぜか若葉の後ろに隠れて近寄ってこない。


「どしたん、ワンワンやで?」

「ふぇ…こぁ、いのぉ…」

「怖ないよ、大人しい犬やん」

『くぅん』

「お、き、のぉ…!」


 その犬は、ゴールデンレトリバー。大人の若葉が見ても大きいと思う犬は、紅葉からしたら怪獣のように大きく見えるのだろう。怖い、といって小さく震える紅葉に、若葉はついつい「かわええ」と笑みを漏らした。

 そして紅葉を抱っこし、犬の目線まで持ち上げてあげる。


「ほれ、頭ナデナデしてみ?」

「ぅ…わかちゃあ…」

「大丈夫や、ワイを信じて触ってみ?」

「…ん…っ、ふ…わぁ…!」


──ナデ、ナデ

「ふわふわ、なのっ」

『あらあら、かわええわー』


 恐る恐る撫でた犬の頭はとても大きく、そしてとてもふわふわしていた。紅葉は目を輝かせ、可愛らしい笑顔で優しく優しく撫でていく。そんな紅葉を抱き上げている若葉は、写真が撮れなくて残念そうだ。

 そして犬も、優しく撫でられ嬉しいのか大きく尻尾を振っている。くぅんくぅんともっとというように鼻を鳴らし、紅葉に少し顔を近づけ…、


──ベロッ


「ふぎゃっ!っ…ぅ、わぁぁぁーんっ」

「も、紅葉!?」

『キャーごめんなさいね、メッ!』

『くぅ…ん…』

「ふぇっ、わ、かちゃぁあっ、ぇ、んっ」

「あーこれくらいで泣くんやない!大丈夫やから、なっ?」


 大きな舌は紅葉の顔半分以上をとらえ、涎を残して離れていった。その衝撃に紅葉は泣いてしまい、若葉は慌てて抱き上げ、顔を拭きながらあやしてあげる。

 トラウマになってしまったか、そう思う若葉だが、後日小さな犬とまた出会い、嬉々として近寄っていった紅葉にホッとしたのはいうまでもない。



おわり。

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あきゅろす。
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