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 騒然となる教室。みんなが紅葉の周りへ集まってきて、今のを聞いて己の名前も呼ばせようと躍起になっている。この迫力は少し怖い。けど、みんなの笑顔に釣られて紅葉もふにゃ、と可愛らしい笑みを浮かべた。


『いきなりどうしたんだよっ!』

「えと、クリスマスにね、急に戻ったん」

『よかったな!これからいっぱい話しようぜっ』

「っ、うん!えへへ、お話しいーっぱいするんっ」

((か、可愛いっ))


 このクラスメートも、みんなずっと待ち望んでいたのだ、いつか紅葉と対等に会話出来る日を。だからなのか次から次へと話しかけてくるクラスメートに、紅葉は焦りながらも答えていった。紅葉も嬉しいのだ、みんなとお喋りが出来ることが。

 そして興奮しているせいか、みんなチャイムに気づいていないらしい。唯一気づいた菖蒲が紅葉のとこまで人を掻き分けて向かい、周りを落ち着かせようと声をかけていく。


「もうチャイム鳴ったし、なにも今しか喋れないわけじゃないんだから…っ」

『もう少しだけ!』

「でも…」

「…おー?なにやってんだお前ら!SHR始めるから席つけよーっ」

『『えーっ』』

「なんだ、ほんとにどうした。先生をのけ者にしないでくれ!」

(先生まで…)


 はぁ、とため息をついた菖蒲は、その時点で全てを諦めた。担任である黒澤ツツジ。彼も興味があるのか輪の中心へやってきて、そこに紅葉がいることに気づいて豪快に笑った。


「はははっ、椎名は相変わらず人気者だな!」

「ぅ…?アヤちゃんとか、桐の方が人気者、だよ?」

「みんな生徒会だからなっ。…ん?」

「…あっ、アヤちゃ、ハーちゃんは?」

「ああ、教室にいかせたよ?僕たちもちゃんと席、つこうね?」

「うん!あのね、僕ねっ、国語の授業の朗読、一回してみたかったん!」


 今日あるから楽しみ!と嬉しそうに話しながら己の席へつく紅葉を、先生は凝視した。周りもバラバラと席へ戻り始めた…そのとき、先生が紅葉を指差し、生徒以上の大声をあげたのだ。


「し、椎名が喋ってるぅうう!?」

――キーンッ

『ちょ、クロちゃんうっさ…!』



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あきゅろす。
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