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「わかちゃ、とちゃうの…わかちゃ、やさしいの!」

「っ…紅葉ぃ…!アカン、可愛すぎやっ!キリンさんでも見に行こーな」

「あいっ!」


 涙で濡れた顔を拭いてあげ、そのままグッと持ち上げて肩車をしてあげる。高くなった景色に喜んでいた紅葉だが、キリンを目の前にしたときは可愛らしくポカンと口を開けていた。

 それからも色んなものを見た。象を見たときはちょうどショーをやっていて、賢い象に若葉まで大はしゃぎ。あらいぐまのときは紅葉をその前に立たせ、記念写真も撮った。


「わかちゃ、だっこは?」

「んー?それはあとでやな。先にお昼や!」

「にゃ、わかちゃのおべっとーっ」

「っしゃ、食べる場所探すでーっ」


 繋いでいた手を離し、持ち上げながら走り出す若葉。髪のセットが少し乱れるが、それもお構いなしに休憩所へ一直線。ちょうど日陰になっていて、ゆっくりとしたお昼をとることが出来た。

 お弁当は美味しかったし、色んな動物を見て、たくさん写真も撮った。残るは紅葉が一番お目当てにしていた触れ合いコーナーだ。そこを見つけたとたん紅葉は若葉の手を離し、走り出してしまった。


(……クク、ガキやなぁ…)


「ほぁー…うさちゃ!」

「んー惜しいな、モルモットやこれは」

「も…?もぅもっと、かわえーのっ」

「モルモット、な。それから可愛い、や」

「えへへ、だっこぉ」


 おいでーと小さな、といっても紅葉にとっては大きいモルモットに手を伸ばす。だがその子はピョンピョンと目の前から逃げてしまい、紅葉も慌ててそれを追った。

 だがなかなか捕まらない。うるる、と紅葉の瞳が揺れる。


「ああ゙っ、も、紅葉泣くんやないっ!ワイが今捕まえたるっ」

「ぅ…だっ、こぉ…」

「よっしゃ、あの白いのでエエか?」

「ん、」

「……だらっしゃああ!!」


──ビクゥッ


 若葉の大声に驚いたのは、果たして "何" だったのか。嫌に周りがスッキリした中、若葉はちゃっかりと捕まえたモルモットを紅葉にそっと渡した。



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