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 自分で持つといって背負ったリュックに帽子、それは紅葉の可愛さをより強調していた。……と、そんな紅葉とは真逆なのが若葉だ。

 金髪の髪は今日はキッチリとオールバックになっていて、日差し対策にサングラスをしている。シャツはハデだし、腰にぶら下げた小さなカバンはジャラジャラしていてとても柄が悪い。

 なのに首にぶら下げたデジカメが余計恐怖を煽り立てるように光っている。


「にゃんにゃ、にゃーっ」

「ははっ、猫はおらんて」

「……にゃ、わかちゃ、にゃんにゃいたっ」

「はっ!?……ってなんや、トラか」

「おっきーねっ」


 初めて見た!と目をキラキラさせる紅葉をパシャリ。紅葉は柵に手をかけ、小さなそれをトラの方へ伸ばして触ろうと必死だ。もちろん届くはずもなく、紅葉はシュンとしたまま次の檻へ移る。

 そこにいるのは、百獣の王、ライオンだ。


「わかちゃ、こぇ、なーに?」

「んー?ライオンや、強いんやでー?」

「わかちゃ、らいおんなの!」

「……ワイが?」

「つよいの!」


 えへへっと天使の微笑みを見せる紅葉に、若葉は感動したようにひしっと抱き締めた。それは端から見れば子供を押しつぶしているようだが、2人の顔は満面の笑顔。決して誰も近寄らず、むしろ2人の行く先は空いている。


「らいおん、さーんっ」

『………』

「ふふ、かみのけ、わかちゃそっくりです、ねー」

『…ガォオオッ!!』

「っ──ひゃう!ぅ…ふ、ふぇぇーっ」

「も、紅葉…!っんのライオン風情で紅葉に何してくれとんじゃワレェッ!」


((ええーライオンに当たった!?))


 ペタン、と尻餅をついて泣き出した紅葉を守るように抱き締めながら、若葉はライオンを睨む。もちろんライオンが相手をするわけもなく、若葉も紅葉のためにそこをさっさと離れ、抱っこしながらあやしていた。


「大丈夫やでー紅葉はワイが守ったるさかい、男はあれくらいで泣いたらアカンよ」

「んく、ひっく…がぉ、ゆったの…」

「せやね、凶暴やなぁ」



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