1 紅葉が初めて動物園に行ったのは、3歳のとき。幼稚園も慣れ、周りの影響で色んなものに興味を持ち始めたころだ。 『……はい、続いては触れ合いコーナーです』 「はぅー…」 『可愛いですねーちょっと抱っこしてみましょうか』 「ぅ、すう!」 「んー?何や紅葉、なんかゆうたかー?」 「わかちゃ、だっこ」 「抱っこして欲しかったん?ほーら、っしょ、重なったなー」 夕飯の後片付けをしていた若葉は、紅葉の言葉に嬉しそうに抱き上げた。だが当の本人はふぇぇ、と顔を歪ませ、今にも泣きそうな顔をする。 慌てた若葉はリビングの方までいき、あぐらをかいて座り、紅葉をあやした。 「どないしたん。……まさか…イジメられとるんかっ!?」 「ふぇぇ、だっこぉ…」 「えぇーしとるやーん」 「ひっく、ちぁう、のーっ」 プルプルと首を振り、涙で潤んだ瞳で若葉を見上げ、テレビを指差した。そこでは動物園のロケを放送していて、今ちょうど触れ合いコーナーなるところで子供と小動物が楽しそうにしているところだった。 気がついたときから紅葉は犬や猫を好きになっていて、散歩の途中で見かければ一目散に近寄っていくほど。そういえば遠出をしたことがないなと若葉は思い返し、行ってみるか、と聞いてみた。 「ここ、いくんっ?」 「そうや。今度の土曜日、連れてったるな!」 「ふへ、わかちゃ、すきぃー」 (くぅー…カメラ忘れんようにせんとっ) テレビに再び釘付けになる紅葉を見て、若葉は早速親バカを発揮した。3歳になり、幼稚園にも通うようになって。これからはもっといろんな所へ連れて行ってあげないとなぁ、なんて思うのでした。 ──ババンッ! 「ついたで紅葉っ。動物園や!」 「やっ!」 「はーぎょうさん人おるなぁ…はぐれんようワイの手ぇちゃんと握っとくんやで」 「あいっ!どーぶつさん、いくのっ」 「ほなレッツゴー、や」 そういって気合い十分で入っていく2人。今日は天気もよく、朝に作ったサンドイッチもうまくいったので気分は絶好調だ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |