1
あの村山久が学校に来るようになった。そんな噂…いや事実が学園内に流れるようになったのは、つい最近のこと。もちろん目的は…涼だ。
このたび2人は晴れて恋人同士となり、学園中の話題となっていた。他の人たちはそれに納得がいってないが、久に逆らうことが出来ずにただ好意を寄せていた。そんな…お昼休み。
「……おい」
『んぁっ、久先輩!わぁ…迎えに来てくれたんですかっ?』
「チッ…行くぞ」
『はーい!じゃあまた後でねっ』
周りの視線がウザい久は涼が来るのもまたず、先に歩き出してしまう。だけど本人はそれを気にするようすもなく、海たちに別れを告げてその後を追った。向かう先は屋上。今や2人のテリトリーとなっている。
『んーっ、いいお天気!暖かいですねっ』
「ああ。………飯は?」
『もちろん作ってきましたよっ。じゃーん♪』
用意してきたお昼を久の前に広げ、自慢げに笑う涼。久と付き合ってからは涼がお昼を作るようになり、今では涼はこの時間を楽しみにしていた。
「……………うまい」
『えへへっ、久先輩のために頑張ったんだもんっ』
一口食べ、美味しいといって少し乱暴に頭を撫でる。その無愛想に見えるそれも涼は好きでたまらないのだ。好きな人に美味しいと言われたら誰だって嬉しいものである。
『あ、アスパラもちゃんと食べて下さいっ』
「あ?……いらねぇ」
『ダメですっ!久先輩のためにバランス良く作ったんですから…ね?』
「っ…今日だけだ」
アスパラを口元に出され、ね?なんて首を傾げられたら久だって何も言えなくなる。そのまま涼を食べてしまいたくなる気持ちを抑え、あまり好きでないアスパラにかぶりついた。
『ふふっ、僕ね、久先輩にあーんするの好きっ』
「は?」
『僕だけじゃないんだなって思うと、凄く嬉しくなるの』
「………じゃあお前もやんな」
『…えっ?』
「俺以外に、やるな」
恋人がやってたらムカつくだろ?そんな意味を込めて久がいうと、涼は少し赤くなりながら小さく頷いた。結局久は涼が作ってくれたものを残さず食べ、のんびりとした時間が訪れる。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!