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 右手を皐月に、左手を睦月に引っ張られる。我関せずな弥生は閏を連れて勝手に部屋を決めてしまった。



「キャーヤメテー僕をめぐって争わないでー」


「……楽しそうだな」


「ふはは、楽しい。喧嘩してくれたらもっと楽しい」


「あーもーそないな雨音も好きやーっ」


「わても関西弁好きやー」



 無表情のままむぎゅーっと抱きついて。それを皐月に引き剥がされて抱きつかれ、睦月に同じことをされてエンドレス。

 始めは楽しんでいた雨音も飽きてきたようだ。



「ねー早く部屋決めようよー。僕、早く遊びたい」


「せ、せやな…やけど、」


「仕方ない…毎日交代で部屋に来い」


「お、よしキタ。んじゃ今日は閏だな」


「「なんでだよ (やねん)」」



 スルリと2人の間を抜け、閏の入っていった部屋に入る。

 驚く閏に、お構いなしの雨音。
 勝手に荷物を広げだした。



「い、色々持ってきてるんですね…」


「あたぼーよ、1ヶ月だもん。やることいっぱい荷物もいっぱい」


「それは?」


「むふふ…よくぞ聞いてくれましたっ!これはですね、このスイスで着るために買った服なのです!
 いやー探した探した。やっぱペー●ーみたいな格好をしなきゃ意味ありやせんしね。汚れてもいー服だし……あ、閏も着る?小さいけど」


「いっ……いえ、大丈夫です…」



 服を持って目を輝かせる。
 いつも以上にペラペラ喋る雨音に、さすがの閏も引き気味だ。

 そして雨音は恥じらいなく着替えだした。



(この1ヶ月…やっていけるんでしょうか…)

 先を思うと溜め息が止まらない。



「うーちゃん、溜め息つくと幸せ逃げるよ」


「ええ、そうですね…」


「よっしゃ、外行くぞーっ。むーつきー、やーよいー、さーつきー…行くぞー」


「あ、ちょお待ってや」



 大きすぎる半ズボンに、カーキ色のTシャツ。トンガリ帽をかぶって気分はハ●ジ。

 ペー●ーじゃないよハ●ジだよ。



「スーハースーゴックン」


「何してるん?」


「この綺麗な空気を食べていたのだよ。体にいいそうだからね。さぁ睦月もご一緒に」


「スーハースーゴックン」


「……ほんとにやってるし。むっちゃんバカだなぁ」


「ガーンッ!!」




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