2 右手を皐月に、左手を睦月に引っ張られる。我関せずな弥生は閏を連れて勝手に部屋を決めてしまった。 「キャーヤメテー僕をめぐって争わないでー」 「……楽しそうだな」 「ふはは、楽しい。喧嘩してくれたらもっと楽しい」 「あーもーそないな雨音も好きやーっ」 「わても関西弁好きやー」 無表情のままむぎゅーっと抱きついて。それを皐月に引き剥がされて抱きつかれ、睦月に同じことをされてエンドレス。 始めは楽しんでいた雨音も飽きてきたようだ。 「ねー早く部屋決めようよー。僕、早く遊びたい」 「せ、せやな…やけど、」 「仕方ない…毎日交代で部屋に来い」 「お、よしキタ。んじゃ今日は閏だな」 「「なんでだよ (やねん)」」 スルリと2人の間を抜け、閏の入っていった部屋に入る。 驚く閏に、お構いなしの雨音。 勝手に荷物を広げだした。 「い、色々持ってきてるんですね…」 「あたぼーよ、1ヶ月だもん。やることいっぱい荷物もいっぱい」 「それは?」 「むふふ…よくぞ聞いてくれましたっ!これはですね、このスイスで着るために買った服なのです! いやー探した探した。やっぱペー●ーみたいな格好をしなきゃ意味ありやせんしね。汚れてもいー服だし……あ、閏も着る?小さいけど」 「いっ……いえ、大丈夫です…」 服を持って目を輝かせる。 いつも以上にペラペラ喋る雨音に、さすがの閏も引き気味だ。 そして雨音は恥じらいなく着替えだした。 (この1ヶ月…やっていけるんでしょうか…) 先を思うと溜め息が止まらない。 「うーちゃん、溜め息つくと幸せ逃げるよ」 「ええ、そうですね…」 「よっしゃ、外行くぞーっ。むーつきー、やーよいー、さーつきー…行くぞー」 「あ、ちょお待ってや」 大きすぎる半ズボンに、カーキ色のTシャツ。トンガリ帽をかぶって気分はハ●ジ。 ペー●ーじゃないよハ●ジだよ。 「スーハースーゴックン」 「何してるん?」 「この綺麗な空気を食べていたのだよ。体にいいそうだからね。さぁ睦月もご一緒に」 「スーハースーゴックン」 「……ほんとにやってるし。むっちゃんバカだなぁ」 「ガーンッ!!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |