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「ちょっと、なーんで私が手伝ってんのに市川は寝てんのよ!」
「ぇ……あ、堪忍してやっ、探ぅ…」
「ん…?」
「ん?じゃないわよ。大体ハタキ持ったまま寝るってどういうこと?呆れを通り越して感心するわ」
「……どうも」
「どうもじゃなくて手を動かしなさい。蓮も市川に甘すぎるわっ」
「ひぇ、かてぇ…っ」
騒々しい蓮の部屋。3人はバンダナを巻いてマスクまでして、部屋の中は物で溢れかえっている。そう、今日は寮の部屋の大掃除だ。
冬休みは蓮の実家へ帰り、もう明後日には学校が始まるという今日。去年の汚れが溜まった部屋を掃除しようとしたのだ。始めは蓮だけで出来るとこまで…と思っていたのだが、探もやるといいだし、紅が遊びに来て巻き込まれてしまった。
「大体なんで今なのよ。去年のうちにじゃないと意味ないでしょ?」
「そうなんやけど…冬休み中にまた埃溜まっちゃうさかい」
「あー…それはそうね」
「あ、そこの上もお願いします」
「………」
「探っ、探はあっちお願い」
「うん」
今は物の上に溜まった埃をはたきで落とし中。上から順に、そういって聞かなかった蓮の指示通り2人は動き、部屋の中の埃を落としていく。紅はいささか投げやり気味だ。
「でもまぁ偉い方ね。金持ちは業者呼んだりするから」
「さい、ですか?人に見られるの、嫌やないんやろか…?」
「普通はそう思うもんよ」
「蓮、出来た」
「あ…こっちも終わったさかい次、掃き掃除…」
続いて蓮の手には箒、2人の手には雑巾が握られた。奥の方から玄関へ向かって掃いていき、2人は棚を拭いたりする。
たまに家具を2人にどかしてもらい、その裏を蓮が掃くという光景も見られた。
「はぁ…これ、高くつくんだからね」
「分かっとります。やから、あのっ…」
「……?」
「窓拭きも、お願いしますっ!」
「……あはは、いい性格してるわね」
恐る恐る、でも勢いよく頭をさげる蓮に紅のこめかみがピクッと青筋をたてた。3人の役割分担がしっかりでき、少ししたころには探と蓮の部屋は終わっていた。
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