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恋するマッドサイエンティスト



エヌ・ジンが愛を伝えようと思い立った日、残念ながら名前は留守であった。


ドアベルを何度鳴らそうと、声はおろか物音ひとつ聞こえない邸宅を前にして、エヌ・ジンは暫し思考する。


もちろん、“諦める”などという選択肢は彼の中にはない。

名前に関してはエヌ・ジンは蛇のようにしつこい男だった。



半面を金属版で覆われた頭を捻ること数分。

彼は不気味に笑いながら名前の自宅前を後にした。








「ようこそ、我が研究室へ」

「…………」



地下に設けられたエヌ・ジンの研究室で彼と対面した名前は、そのあまりのことに絶句していた。


さっき、本当につい数秒前まで自分はココやクラッシュたちと一緒にいたはずだった。

しかし、突然眩い光に包まれたかと思ったらもうこの場に連れてこられていた。


十中八九、自分を取り囲むように設置されている妙な装置が関係しているに違いない。

そして、このいかれた科学者が全ての現況だということも間違いない。



「自宅にいらっしゃらないものですから、こちらからお呼びしてしまいましたよ」



ヒヒッとエヌ・ジンは不気味に笑う。


せっかちな男だ。帰ってくるまで待てないのだろうか。

まあ、この男が自宅前で待っていることを知っていたら絶対に帰らなかっただろうが。



「だからって非常識だわ」

「失礼ですね。恋する男は誰にも止められないと言ってください」

「……何ですって?」



恋? 狂った発明にしか興味の無さそうなこの男が?



「そもそもあなたをここへ呼んだのも、この溢れる愛を伝えるため。どうか僕の愛を受け取ってはくれませんか?」



僅かに染まる頬。片手には花束。


思わず確認したこの部屋の唯一の出入口には、見せつけるように大きな南京錠がかけられている。


家にいた方がまだマシだったかもしれない。

名前は今日外出したことを酷く後悔した。






(恋するマッドサイエンティスト)



爆走ニトロカートの口調が一番好き。



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あきゅろす。
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