――伝える事 「俺、ティアが大好きー!!」 辺りが沈黙と驚愕に包まれる。 赤毛の少年が発した言葉は世界の理を粉砕し、秩序を乱れさせ世界に暗雲を―― と、そこまで酷くはないが。 とにかく、仲間達は驚いた。 「ル、ルーク……お前どうしたんだ!?買い出しから帰ってくるなり…!」 「そ……そうですわ!突然そんな事を言うなんて!! ご覧なさい、ティアが驚きの余り気絶していますわ!!」 ガイが珍獣を捕まえるかの如く、にじにじとルークへ近付く。 ナタリアは意識が無いティアを抱え上げ、ぶるぶると震えている。 一方ルークは、満面の笑顔。 その笑顔ですら、もはやいつものルークではない。 「だって好きなんだもん」 「うぉー!また言ったぞこの7歳児!!」 「あ、大佐」 それまで「こいつぁ面白い事になりそうだぜ」という笑顔で傍観していたアニスがぽつりと漏らした呟きに、ガイとナタリアは同時に反応した。 ガイは瞬時にジェイドに飛び付き、事の次第と「これはお前がやったのか、いややったんだなこの鬼畜眼鏡」といった旨の内容を早口で伝えた。 ガイの話を『とてもゴキゲンな顔で』聞いていたジェイドは、爽やかな風と共に頷いた。 「はい、私がルークにちょっとしたおくすりを」 「今度は何してくれたんだドクトルマンボさんよ!?」 「いやですね〜私が無理矢理飲ませた訳ではありませんよ。 むしろルークから相談に来たのですから」 ガイとナタリアは顔を見合わせ、視線でジェイドに説明を仰いだ。 ついでにアニスの興味津々な視線も確認し、ジェイドは眼鏡をちょいっと直す。 「彼が『普段ティアに世話になっている事を感謝したいのだが、なかなか素直になれない』と言ってきたので、所謂自白剤もどきの薬をあげただけです」 「じ、自白剤……」 「それでは何故、あのような愛の言葉を?」 「どうやら飲み過ぎちゃったみたいですね☆ 理性が吹っ飛んで、彼は今やただの7歳の男の子です♪」 極上鬼畜スマイルで言い放ったジェイドの言葉に、 ガイは畏れ戦き ナタリアは目が点になり アニスは「きゃわぁぁ〜んvV」と、楽しそうにはしゃぎ出した。 「まぁ理性が飛ぶと言っても、中身は7歳のガキんちょです。 放っておいても特に問題は無いでしょう。1時間もすれば元に戻ります」 ジェイドが説明する一方、ようやく意識を取り戻したらしいティアが、頭を抱えて俯いていた。 「ティア〜?大丈夫か?具合悪そうだぞ?」 そしてあどけない表情でこちらを覗き込んでくるルークから、顔を逸らすので精一杯だった。 「か、可愛い、かも……じゃなくて、近いわ!お願いだから離れてルークっ!!」 「やだ〜♪俺ティアが大好きだもん!いつも一緒にいてくれてありがとな!! これからもずっと一緒にいよーぜーvV」 「くっつかないでぇぇっ///」 遠巻きに、若干呆れた様子で二人を見る仲間達がいた。 「俺がティアの立場だったら確実に泣くぞ……」 「まぁ…ティアもなんだかんだで嫌じゃなさそ〜だしぃ? アニスちゃん的には楽しいからあのまんまでいいかなっ♪」 「一応ルークの『感謝の気持ち』も伝わったようですし、良しとしましょう」 「アッシュにもあれを飲ませたらどうなるのかしら……」 「それは絶対ダメだ!!」 独り言のようなナタリアの言葉に、いち早く断固反対するガイ。 その後ろでニヤニヤしているジェイドとアニス。 「それ、面白そーvV」 「きっとルーク以上に面白い反応を見せてくれますよ☆ 重要な情報を教えてくれるかもしれませんし、今呼び出して飲ませちゃいましょうか」 「ぜっっったいダメだって!!」 「……でも、あのようなアッシュを見るのは、少し抵抗がありますわね。 遠慮しておきましょう」 天然なナタリアには三人の真意は伝わらず、どうやら自己完結したらしい。 ともかく、ティアにべたつくルークはそのままで。 ティアはルークを引っぺがすのに必死だった。 一時間後、ティアに益々距離を置かれて凹むルークの姿が確認されたとか、されてないとか。 ******** こ、こんなはずでは(笑) こんな時、ジェイドは役に立つキャラですね [Back][Next] |