SBX邸の隠蔽事情 ※接吻事情続編 ◆ 「あ、わんちゃん ピットくん見なかった?」 見慣れた灰色の三角耳を見付けて声掛けた 彼女は飛んで逃げた天使を追い掛けていたが、見事見失ってしまっていた所だった その耳の主の狼は眉間に皺を寄せて、がう、と吠えた 「わんちゃんじゃねぇ、狼だ! …羽根餓鬼ならピーチ城の方に飛んでったぞ」 「分かった、ありがとーわんちゃん!」 「だから誰がわんちゃんだ! …ったく、もう行っちまった」 がりがりと頭を掻いて、ウルフは溜め息を吐く 城の方角に駆けていった彼女の後ろ姿が見えなくなったのを確認して、「もういいぞ」と言った ウルフが背をもたれていたウルフェンの中から、ひょいと天使が顔を出す 「ありがとうウルフさん」 「別に。お前の為じゃない」 「でも隠して貰ったし、巧い事嘘も吐いて貰ったから。…はぁ、助かったぁ」 「喧嘩でもしてんのか」 「あう……ケンカっていうかー…僕が子供みたいに駄々こねた挙句に逃げてきたんだけど。だから今は会いづらくて」 「"子供みたいに"? 子供が何言ってんだ」 「む、子供じゃないよ 貴方達地上の生物と違って天使に年齢の概念なんか無いもん」 「そうかい …ま、喧嘩でもそうでなくても、仲違いしてんならそれでいい お前が一番邪魔だったからな」 「……どう云う意味、それ」 「先刻言ったろ。あいつとお前を会わせなかったのは、"お前の為じゃない"ってな 俺は自分の為にしか動かないんでね」 言ってウルフはにやりと笑んだ ピットは訳が分からないと云う顔をしたが、しかし直後に意味を理解し、ウルフェンから降り、ウルフの首元を掴んだ 「図りやがったなテメェ!!」 「耳元でうるせーな羽根餓鬼。狼の聴覚お前等の何倍あると思ってんだ」 「黙れ、つべこべ言うな野良犬がぁ!!!!」 「へえ、それが本性かい、天使さんよ それよりいいのか? 今度はお前が見失うぜ」 「一々煩い、言われなくても追うわ!!!!」 ピットはウルフを離し、一目散に城へ向かっていった ウルフはやれやれと再び息を吐き出した 「俺らしくねぇな、まったく」 あんな子供にムキになるなんて 「…これじゃ、俺も子供じゃねぇか」 ──けれど、欲しいと思ってしまったものは仕方がない この支配欲の赴くまま、とことん奪いにいってやる ◆◇◆◇ ピットくんの続編 ウルフ分かんねえ 私の中でのピットくんのイメージは…何と言えばいいやら。…多重人格、みたいな。 気分・機嫌・感情によって態度・性格・口調がコロコロ変わってしまう天使様(なんつー妄想だ) 09/03/21 [*前へ][次へ#] |