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捕食者と優雅なる憂鬱
血啜続編



自室で特にする事もなくぼうっとしていると、こつこつと扉が叩かれた
僕は相手の確認もせずに「どうぞ」と答える
どうせ扉の向こうの人物は限られている。確認する必要も無いのだ

「失礼します」

声と共に現れたのは案の定、彼女だった
──そう、この部屋の扉を叩く者なんて、この大蛇丸様のお気に入りである彼女ぐらいしか居ない
例えば大蛇丸様は、ノックなんてものはしない
僕が一人で寛いで居ようが、誰かと談笑して居ようが、女を連れこんで居ようが、問答無用で戸を開ける
そして用件が済めば、さっさと帰ってしまう
例えば他の部下達は、僕の部屋に入る事すらしない。…僕がそうさせないだけだが
さっさと戸を開ければいいものを、ある者はあからさまに恐怖し、ある者はあからさまに殺気を放つ
そんなものが扉の前で開けようか開けまいかと右往左往するものだから、向こうが行動を起こす前に僕の方が痺れを切らして戸を開けてしまうのだ

「あの、少しお話でもしませんか」

彼女は少し躊躇った後、そう言った
彼女がこんなにも遠慮がちなのには理由がある
まずは、僕の時間の都合が悪くないかどうか
それから、"覚悟"があるかどうか
先にも言った通り、彼女は大蛇丸様のお気に入りである
以前、彼女と話した部下の一人が、話が弾んだその勢いで彼女の肩を抱いた事があった
彼女自身もその彼も回りに居た者も「調子に乗るなよー」なんて言って気にもしていなかった
しかし彼は──その夜から謎の失踪を遂げた。──失踪を遂げた、事になった
それからは、彼女と話す時は、皆ある程度の距離を取り気を付けている。勿論、彼女自身も

「いいよ。座って
 お茶でいいよね」

僕は彼女を部屋に招き入れた
暇を持て余していた所だったし、何より僕は"覚悟"なんてものをしなくていい
何故なら、大蛇丸様直々に"安全牌"の称号を頂いているからだ



09/07/11

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