前夜の秘め事
「おじさま」
少女が男性に声掛けた
少女の雪の瞳が彼の眼と合う
その瞳に捉われ、潰れた右瞼の奥、何も映さない瞳が疼いた
「…なんだ」
「おじさま、この戦いも、もう終わるんですよね」
「あぁ
改まってそんな事を訊くなど…どうした?」
シンの体内
ジェクトとの決戦を目の前に、彼女は赤の男、アーロンにそう訊ねた
アーロンは短く答えて、重ねて彼女に問うた
「…終わったら、おじさまは」
「異界へ還る」
淡々と答える男に、少女はふと眼を伏せる
「どうした」
「離れてしまうのは哀しいです
だから…」
「…還るのは──お前も同じ事だろう」
アーロンは既に死人で、約束を果たせば異界へ還る事になっていた
そしてそれは、異世界から来た彼女も
「還る事を望んでいたではないか」
「望んでいます、今も
皆に、おじさまに…会いたいのは、変わりません」
"おじさま"
それは、彼女が彼女の世界で求めた男
彼女がアーロンをそう呼ぶのも、異常な迄に慕うのも、全てその影響
彼を無意識の内に、愛した男と重ねていた
「でも──スピラの皆も好きなんです
別れは辛い…」
「……俺は── …」
「え? ──!」
何かを呟いたかと思うと、アーロンは彼女を抱き寄せた
その逞しい腕に抱かれて、身動きが取れなくなる
「おじさま…?」
「…お前と離れたくない」
「おじ、さま」
「──愛してるんだ」
「…おじさま」
「──アーロンだ」
「え…」
「俺の名だ」
「知っています、おじさま」
「…もう…最期なんだ
──名を呼んでくれ」
「おじさま──」
「──俺を視てくれ」
「──アーロン…おじさま」
「違う」
「…アーロン」
「──…」
抱き寄せただけの彼女の身体を、両の腕で抱き締めた
強く強く、離さぬ様に
「──愛してる」
アーロンは彼女の小さな唇に口付けた
すぐに離し、しかしまた重ねる
啄む様に幾度も幾度も繰り返す
呼吸がしづらくなって、閉じていた唇を開く
その隙を見逃さない彼は、するりと舌を侵入させた
流石に驚き身を跳ねさせたが、嫌がる事も無く、彼女はそれに遠慮がちにも応じる
気を良くしたアーロンは、更に口内でその舌を暴れさせた
粘着質な水音が響き、身長差から二人の交ざった唾液が彼女の口端から溢れ顎を伝い首筋を流れてゆく
「…ん、んぅ…‥っは…ぁ」
隙間に漏れる苦しげで艶めかしい彼女の声に、彼は興奮を覚える
アーロンは左の腕で彼女の身体を支え──否、拘束したまま、彼は右腕を彼女の胸へと持っていく
「やっ‥だ、だめ…」
「何がだ?」
「な、なにがって…」
「──愛してる」
彼女の耳元へと唇を寄せ、低い声でそう囁いた
「あっ…ぁ…‥ッ」
ぞくぞくと快楽が走っていく
その様子を見て、彼が口元を吊り上げる
「還る前に──俺をその身に刻んでやる」
シンの体内
最終決戦前夜の出来事──…
◆◇◆◇
中途半端に終わらせて
06/05/24
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