Menu:Lunch 〜混合〜
ページには赤いしるし
それから私と赤也君は当番の日になると顔をあわせ、一緒に仕事をするようになった。
本の返却が遅れている人のリストを作成したり、かえって来た本を元の位置に戻したり・・・休み時間のほんのわずかの時間だが赤也君とおしゃべりできて楽しい。
何ヶ月か経ち、お互いのこともちょっとだけど分かってきたある日。
私は赤也君に相談された。
「さよさん、なんかいい本ないですかね」
『あ、赤也君。漫画の知識なら赤也君のほうがあるでしょ』
「そりゃそうっすけど違いますって。小説っす」
『・・・・・・』
カウンターにひざをついてこちらを見てくる。
『・・・え、どうしたの』
「親に言われたんすよ。
あんた、漫画ばかり読んでないで少しは小説も読んだらどうなの!!・・・って」
私の頭の中で部屋に寝転がって漫画を読んでた赤也君が母親に怒られているシーンがなんとなく浮かんでしまい、おもわず吹き出す。
「笑わないで下さいよ!」
『ごめん、ごめんねぇ。
でもあまりにも綺麗に想像できちゃったからさ・・・ふふ』
「さよさん・・・!」
本当に怒りそうだったので少し落ち着いていった。
『ごめんね。
そうだなぁ、赤也君はどんなお話が好き?』
「そうっすね・・・。
ヒーローが悪を倒すのとかすきっす」
『おぉ、最後に正義が勝つ感じか・・・』
少し頭が悩む。
「もしかしたら私のお気に入りの本、赤也君が気にいるかもしれないわねぇ」
この図書室にあるかな、と思い探してみる。
『・・・あった。
赤也君は、映画化した本とかってあまり見たくない人?』
「いや、別に」
『じゃあ、これかな』
「っげ、分厚い・・・」
『タイトル見て・・・!』
「『ハリー・ポッターと・・・ものの石』」
『「ハリー・ポッターと賢者の石」ね。
見たことある?』
「まだ見たことないっす」
『おぉ!なら、おすすめするよ。
主人公のハリーは赤也君と同じ11歳なんだよ』
「そうなんすか!」
『うん、これ七巻くらい・・・だったかな。
でているんだけど、全部読んじゃった』
「この厚さで七巻っすか・・・?!」
『うん。でも面白いからすらすら読めちゃうの。
漢字にはふり仮名ふってあるし、それにこのページとかハリーと同じ紙を見ているように思わないかい?』
「本当だ・・・これ面白そうっすね!」
ぱぁっと明るい笑顔を向けられた。
可愛いなあぁあ!!
「二人とも、図書室では静かにね」
司書さんに軽く注意された。
「でもその本面白いわよね。私も好きよ」
「先生、聞いてたんすね」
「貴方たちの声が大きくて聞かないようにしててもきこえてたわよ〜」
『そ、そうでしたか。すみませんでした・・・』
「別にいいのよ。タイミングよく図書室にひとはいなかったから」
キンコーンカーンコーン
ちょうどチャイムが鳴ってしまった。
「さよさん、これ借りてくっす」
そういって図書室から出て行った赤也君。
少し、自分のすすめた作品をみてくれるのが嬉しかった。
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