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愛してる(京楽春水)




言葉というものは、ひどく曖昧模糊なもので。


胸の深い場所に溢れるこの想いを言葉にするならば、きっと「好き」だなんて一言では絶対に表せない。


あなたを見つめているだけで胸がぎゅっと苦しくなって
それでいてとてもあたたかな、幸せな気持ちでいっぱいになって
あなたの隣にいたい、私だけを見ていて欲しい、なんてわがままがこんこんと泉のように溢れてくる
いつまでも抱きしめていたくて、抱きしめられていたくて
いつか体という境界さえも溶けあって、いっそ一つになってしまいたえたらいいのにという、この身勝手な想いを
どんな言葉で言い表したらいいのか、私には分からないから。



「どうしたんだい?今日はやけに難しい顔をしてるじゃないか」


「・・・難しい顔、ですか?」


「まるでこの世の終わりでも考えているような顔だよ」


「この世の終わり・・・そうかもしれませんね」



あなたという存在が私の前から消えてなくなってしまったら
それはきっと、私にとっては世界の消失にも等しい事象で
だからこそ、この溢れる気持ちをどうにか全て伝えたいのに



「・・・好き、を伝えるにはどうしたらいいのかなって」


「おや、嬉しいねえ。ひょっとしてそれは僕に、かな?」


「他に誰がいるって言うんですか」



それもそうだ、と目尻を下げて笑うあなた。
そんな優しい笑顔に、さらに胸の奥が締め付けられるような思いがした。
いい意味でも、そして悪い意味でも。



「すごくすごく、好き、なのに。好きなんかじゃ、伝えきれないくらい、春水さんのことが大好きなのに」


「うん」


「それを上手に言葉にできない私が、とても、歯がゆくて」


「うん」


「だけど、本当に、大好きで」



自分でもよく分からないまま、紡ぐ言葉に涙が絡んだ。
とても曖昧で、稚拙で陳腐な言葉でしか愛を伝えられない自分が切なくて、
それでも笑ってその先を待っていてくれるあなたの愛があたたかくて



「……好き、です。愛してるんです。どうしようもなく、あなたを」


「ありがとう、ななしのななこちゃん」


「春水さん、」


「僕もね、君の事を心から愛してるよ。愛してるだなんて、改めて言葉にするとすごくむずがゆいんだけどねえ。でも、本当に、愛してる」



だからそんなに難しい顔をしないで
君の愛は、ちゃんと伝わっているから



深い榛色の瞳がまっすぐに私をとらえて
あたたかい、確かな温度が私を包み込んだ。


ああ、なんて、幸せ



唇に柔らかく重ねられる愛情
その感触が、温もりが、全てが
私に、とめどない愛を語ってくれていた





愛してる





(心で伝わる思い)



瑠輝さまへ


11.04.17

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