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彼女の笑顔に、恋をした。(平和島静雄)


不可解な行動を取る女。

いつも、何を考えて生きているのかわからない。

つかみどころがない。


ファーストコンタクトから、そういう印象だった。



「にゃあ」



そいつは野良猫に向かって、人間的な発音で鳴いた。

猫の鳴き声に似せるつもりは毛頭ないようで、無表情に猫の前でしゃがみ込んだ。


よく見れば、あの猫は、1週間前に俺の後を家までついてこようとしたやつだ。

餌も何も与えていない、それでもついてきたアイツは、餌欲しさに他にも媚を売っているのだろうと思っていた。


2、3日前のことだが、鰹節まで持ってきて、あの猫へ近寄る男女を見かけた。

それでも、そいつらには興味も示さず、ぷい、とそっぽを向いて屋根の上へと登ってしまっていたのだ。



そんな、人懐こいように見せ掛け、実は気分屋の猫。

ちょっと不思議な女を相手に、猫はどんな反応を見せるのか、少なからず興味があった。

俺は彼女に気付かれぬよう、物陰から眺めることにした。



「ハイ」



カバンをガサガサと漁ると、『煮干し』と大きく書かれた袋を取り出して小魚を一匹、猫の前へ差し出す。



「にゃー」



また取って付けたような鳴き声をあげて、彼女は、猫の顔の前で小魚を振る。


それを不快に思ったのか、そうした彼女の手に、猫はネコパンチをお見舞いした。



「……、いたい」



パンチと共に、吹っ飛んだ小魚。

しゅん、として、彼女は猫に殴られた手の甲を擦る。



何事もなかったように去るのだろう、と思いきや、猫は彼女をじっと見ていた。




そして、しばらくすると、後ろ足を立たせて、彼女へ近づく。


先程の光景が嘘のように、猫は彼女へ擦り寄った。




「えっ……」



彼女も、最初は状況が理解できなかったようで、甘えてくる猫を茫然と眺めていた。


にゃあお、と初めて猫が一声鳴いて、彼女の足に喉元を押しつける。



「にゃーお」



それに答えるように、全く似ていない泣き声を彼女は返し、猫の耳元の辺りに触れた。



「すき」



そして、俺は初めて、彼女の笑った顔を目にした。












(……っ、な、なんだ?いま、胸の奥がドキッて…)(つーか、アイツ…あんな表情もできるのか……、)

(だ、だから!なんでドキドキしてるんだ、俺は!)






100426 彼女の笑顔に、恋をした。 中條 春瑠


(静雄さん夢と言っていいのやらwww これのシリーズを書きたいとか思ったり思わなかったり^q^)


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