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天童 瑠璃弥
「……だが、そうだな。確かにこんな奴は他に二人と居ないだろう」

「えーっ!ちょっと、慧ちゃん酷くない?!」

「大丈夫だよ。慧の照れ隠しだから」

「っ!だから、僕は照れてなど…!」



入学式が終了し、あれからずっとわぁわぁと騒いでいた私たちだがなんとか慧ちゃんが昔よく面倒をみていた私だと認めてくれた。
うーん、どうしてココまで頑なに疑う必要があったのかというのは謎であるが、まぁ…よかったというコトにしておこうと思う。



「あ」



「…ん、どうした」

「湊久葉、どうかしたの?」



私の視線の先、そこには煌びやかな雰囲気を全身から周囲にまで惜し気もなく漂わせる赤いジャケットを着たセクスィーな男性。

胸元がいい感じに肌けてる…!



「あ、あああああ、あの、あの男性は!?」



興奮を隠せない私は、ぶんぶんと手を振りながらその男性を指差す。



「いっ、だっ、おまえっ!僕の腕を引っ張るな!!」

「えー…っと、あれってGTRの天童先生じゃない?」

「て、天童?!よしみ?!」

「いや、男性だし…。確か、瑠璃弥とか言わなかったかな?」

「うわ、わわわ、マジで?!瑠璃弥様って仰るの!?うわうわ、うわぁああ!!なに、なんなのあのきらびやかなオーラは!!」



さぁ…俺にはよく分からないけど、と那智は言葉を濁す。

いいから落ち着け…っ!そして僕の腕を放せ!、と必死になっているようだが、本気で抵抗はしない慧ちゃんに私は腕を放すことなど忘れてしがみついた。



「やばいよ、輝いちゃってるよ!?」



わ、ちょちょちょ、しかも目が合った!!



「えっええっっ!!?しかも、近付いてくるし…!!」

「〜〜っ…!?お、おいっ、こら…人の話を…っっ!!」

「え??なに慧ちゃ…ん?!顔、真っ赤だけど!!」

「っ!!いいから、お前は手を――っ」



どうしたのだろう、と本心から心配したのだが、慧ちゃんはプルプルと肩を揺らして硬直している。
唯一、動いているのは口だけで、耳まで真っ赤になっている顔と、ピクピクと震える眉に私は大きく慌てたけれど、彼がそうなる理由が分からない。

そのときの那智はというと、瑠璃弥様と仰るお方を興味も無さそうに見つめ返していた。



「やぁ、悩める子羊たち。君たち2人の噂は中等部からも聞いているよ」

「わっ!わぁあああ!ひゃーー!!おおははは、お話しされたよっ!?」

「そりゃ、一応は人間だしね」

「〜〜〜っ!!!!?」



色気も漂わせつつ、気品がある彼が私より少し高い位置を見て言葉を紡いだ。
どうやら、慧ちゃんと那智に話し掛けているらしい。
けれど、彼が言葉を話すまでの緊迫感に気分が高揚して発した私の台詞と同時に、那智のツッコミが入る。
そして、慧ちゃんも文字にしがたい奇声をあげた。

けれど、そんな慧ちゃんの事情は今の私の頭には入ってこない。



「――ハッ!フラッシュがない私も美しい!」

「いつもは、フラッシュなんてあるんですか!?」

「おや、キミも…新入生ですね。2人の友人ですか?」



目線を少し下げて、瑠璃弥様が私を見つめる。
わぁ、わぁあああ!カッコいいよ、くそぅ。美しい!

思わず、視線にうっとりしそうになるが、私はなんとか耐えた。



「はい、そうで ―――」

「湊久葉は、俺たちの大事な友人です」



けれど、那智が『話すな』とでも言うように途中に口を割り、遮った。
しかも小声で「手とか出そうっていうなら死ぬ覚悟で」とか言った気がする。
う、うん!気のせい気のせい!
少し不機嫌そうに、そんな彼が私を自分の元へと引き寄せる。
そのとき、慧ちゃんから引き離された。
私の方は見ないが、瑠璃弥様に睨みを利かしながら那智は話し始めた。



「湊久葉、もう少し意識しようね〜?」

「え、何が?!」

「慧が慣れない胸の感触に放心してるから」

「…えええっ、ハッ!!も、もももしかして、私のあまりの胸の無さに慧ちゃんを絶望させた!?ご、ごめんね!!興奮のあまり、無意識にない胸を押しつけてしまっていたんだね!ごめんね!!!」



わぁああ、慧ちゃん目を覚ましてぇええっ!と、慧ちゃんの身体を揺するが反応がない。

その中、那智は瑠璃弥様と何か少しだけ話すと瑠璃弥様が輝いて去っていった。


ああっ、瑠璃弥様まだお話が……って、そんな場合じゃなくて、あああっ、どうしよう。

私の胸の所為で、慧ちゃんが…!!



「………じぃーーっ」



「え、なに!?那智、どうしたの?!」



私が慧ちゃんに必死に呼び掛けている最中だというのに、那智がすぐ横に立って私の顔からちょっとズレた下を見ている。
彼の視線の先に、私も目を送る。


ちょ…!

那智っ、アナタ何処見て…!!!



「ないって言ってたけど、別にそこまで――」

「ぎゃあああ、感想なんて求めてないから胸については触れないで!!」

「気にする大きさじゃないと思うけど」

「…ぎ……え、ホント?本当に??イヤじゃない??」

「だって、サイズいくつ?」

「え、んーと…しぃ……ちょ、何言わせようとしてるの!!」

「へぇ〜、中途半端な大きさだって悩んでるんだ?でも胸なんて性感帯として機能さえしてれば、特に問題な ――」

「えええっ、わぁああああ!!今のは聞き逃してよ!!そのフォローは世の女のコには優しく嬉しい言葉だけど、微妙に毒も隠されているし、下ネタに片足突っ込んでる!」



酷いよぅ……私、嫁に行く前に幼馴染みの男の子に胸のサイズがバレた模様です。
地味に恥ずかしいというか、羞恥心というか……うぅっ。
うわぁあ、泣きそうだよ。



「……っ、お前らっ!学園内での破廉恥な話題は慎め!!」

「あっ…、慧ちゃん!!!大丈夫?!よかった!復活したんだね!!」

「うわっ!?なっ、なななななにをする…!!抱きつくなっ!!」



また胸が云々を関係なく抱きついてしまって、私は那智の手によって再び、慧ちゃんから引き剥がされることとなる。



「抱きつくならさー、俺にしなよ?拒絶とかしないし」

「え、那智…。いいの?抱きついていいの?!」

「那智っ!それは、男女不純交遊として見過ごせないぞ!!」

「えー、それって兄さん相手なら違うワケー?」

「ち、違うだろう!!コレはコイツが勝手に…!!!」



090409 中條 春瑠

(瑠璃弥T出番がっ!コレは確実に乗り遅れてしまったよね…!?)


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