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好きだと告げるにはタイミングが大切だから、
「うむ……」



弟である那智に面と向かって宣戦布告をされたわけだが、彼女が好きで誰にも譲れないという事実は変わらない。
だが、だからといって彼女にどう行動したらいいのかが分からなかった。



「けーいーちゃんっ♪難しい顔してー、恋の悩みかにゃー?」

「っぐは…!」

「んもぉ、水くさいなぁ。相談しチャイナよ」



生徒会室から出てすぐ、背を向けて歩いていた方向から勢い良く飛び付かれた為に息が詰まった。
バランスを崩して倒れたりしなかったのは良かったと思う。



「急に後ろから抱きつくな…っ!!そして、チャイナが中国のようになっているぞ!」



このアホが!、と怒鳴るがただ無邪気に笑うだけで、彼女は僕から離れようとはしない。
彼女のこの表情が、僕は一番苦手だ。
嫌という意味ではなくて、どうしても甘く見てしまい、逆らえなくなるから。



「ほら、話しちゃいなヨ!」

「……今日は、随分と機嫌がいいんだな」

「そうかな?」

「ああ。お前の口調がそう軽いときは大抵そうだろう」

「ふふーん、よくご存知で」

「まぁ…伊達に、お前との時間を過ごしてはいないからな」



自覚していなかったというのもあるが、この前までの僕であれば、素直に告げることなく無意味な維持を張って憎まれ口を利いていただろう。
けれど、やはり湊久葉と過ごした刻(とき)というのは、いまもむかしも貴重な時間だったと、今は深く感じている。



「ふふ、流石だなぁ」

「当然だ」



僕に足りない所を、彼女は沢山持っている。

自分より人が大事で、バカなくらいに正直で、真っすぐに突き進む。
何も考えていないように見せて、本当は誰よりも真剣に物事を考えていたり、誰にも頼らずに1人で溜め込むのが悪い癖。
そんな彼女だから、僕は心を掴まれた。
支えてやらなければ、と思うようになったのだろう。



「湊久葉」

「んー、なんだい?なーんか、慧ちゃんが最近、幼稚園の時みたいに私の名前を呼んでくれるようになったから嬉しいなー」



飾らない彼女が、相手なのだ。
なら、僕だって飾る必要はないだろう。



「この前の、ファーストキスの件だが」

「え、ああ…ファーストキスね、この前に話したね。それがどうしたの?」


「僕は、その通りになって欲しい。そして、僕以外の人間には渡したくない、と思っている」



「え?」




ふわり、暖かく和やかな風が吹く。




(……え、け、慧ちゃん?!)(任務は遂行した)(はい?!ちょっと、言ってるコト分かってる?!意味が…!)(考えておけ)(ええっ?!!)



090407 好きだと告げるにはタイミングが大切だから、 中條 春瑠


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