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幼少期 にぃ
「―― よし、わかったか?」

「うん。けいくんって、すごいね!いっぱい いろんなこと、しってるんだね!」

「べ、べつに…このくらい、しっていて とうぜんだ!」

「ううん、すごい!!もっと、たーっくさん!けいくんに おしえてほしいな」




「………。おまえ、ほんとうに ひとりじゃ なんにもできないんだな」

「え?そうなの?」

「……はぁ、しょうもないやつだ」

「?」

「これからも、おまえは ぼくがめんどうをみてやる。だから、ありがたく おもうことだな」

「めんどぉー??ありがたく おもう???」

「…!おまえはっ、どこまでバカなんだ!?」



いつも私にぎゃんぎゃんと怒鳴りを聞かせながらも、なんだかんだで慧ちゃんは毎日のように面倒をみてくれた。

今までずっと那智を遠くから眺めていた時間も、いつの間にか慧ちゃんと話す時間になっていた。


寂しくて、悲しくて、休み時間なんて来なければいいのにって、思っていた時間も、慧ちゃんのおかげで、楽しくて、わくわくして、待ち遠しい時間になりつつあった。



「ねぇねぇ?けいくんって 呼びずらいから、けいちゃんでもいーい?」

「な、なんだと?!ぼくに、ちゃんづけを しようというのか?!」

「いーでしょーお??ね、けいちゃん!」

「なっ…!」

「あれ、けいちゃん?ほっぺ まっかだよ?」

「〜〜…っ!!か、かってにしろ!!」

「…?かって??」

「おまっ…!」



思えば、今だから言えることだけど、その時には慧ちゃんとの話に夢中になりすぎて、那智への気持ちもすっかり忘れ去られてしまっていた気がする。本当に子供って夢中になると周りは見えなくなるし、ゲンキンだ。


そんな慧ちゃんと私が一緒にいる光景というのも珍しくなくなり始めた頃、ふとある時に私の前へ那智がやってきた。



「みくずちゃんって、すごいね」

「え?どうして?すごいのは、なちくんとか けいちゃんだよ?」

「ううん。みくずちゃんだって すごいよ」

「…?そうかな?」



無駄な関わり合いはしなかった慧ちゃんがよく話すようになった私に、たぶん那智は興味を持ったのだろう。



「おい、みくず――…、なち?」

「え?けいって、みくずちゃんのこと みくずって、よんでるの?」

「?そうだよ?」

「へぇー!いいなぁ、ぼくも そうよんでもいい?」

「うん、いいよー!」

「ほんとう?じゃあ、ぼくのことも なちって よんで!」

「わかったー!」

「えへへっ、ありがとう。みくず!」




「……おまえら、いつからそんなに なかよくなったんだ?」

「うーん、いまかな?」

「うん!いまー!!」



このとき、何だか難しそうな顔をして、慧ちゃんが私たちを見ていたのは今でも覚えてる。




それからというもの、女の子たちの自分の争奪戦から抜け出しては、那智が私たちの元へやって来るようになった。



そして、3人の友情はここから始まった。




090321 中條 春瑠

(那智は、幼少期が『ぼく』だったと信じてます。)


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