甘くない幸福は罪である
私の名前はVal。
彼女に付けて貰った名前だ。
私の前のパートナーValvudy――極秘機密の装置で私と合体した男――は、実に寂しがり屋な男だった。
家では片方にだけ出た角で疎んじられ、さらに出来すぎた兄たちに囲まれ比較され、疎んじられる。
主人――彼の父だが――は多くの妾を持っており、Valvudyは八番目――つまり末っ子である――に生を受けた。
彼の母は話を聞いた事は無いが、彼の周りや彼女の事を彼から聞いた事がある。
彼は彼女に執着している。
彼は彼女が欲しいらしい。
「母の愛情」、それを彼女に求めているようだった。
Valvudyが、まっしろの刻まれた力を封印する為に、まっしろのトラウマとなって消えた。
あの時の彼は満足そうな顔だった。
末恐ろしい世界征服と邪魔者の排除を行動する時の笑顔と違って。
しかし、あの後のまっしろはひどかった。
赤ん坊の産声のように、感情の産声を、彼女は初めて挙げた。
私とアブソルとジグザグマを胸に抱いて。
あの時叫んだまっしろの声を忘れられない。
あの時彼等が消えた方向の空へ向かって慟哭したまっしろの泣き声と表情を忘れられない。
あの憎々しいまで晴れ渡った空と太陽を許されない。
だけど、ねぇ。どうしようか。
どうやら、私も前のパートナーと"共に"いた時間が長かった為、彼の性格が写ってしまったようだ。
あぁ、ねぇ。まっしろ。そんなやつに構わないで私の頭を撫でておくれよ。私の前の主人、Valvudyみたいに。
甘くない幸福は罪である
あぁ、わかるよ。君は私をただのポケモンとしか見てないんだね。
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